ハーバード大と東大は単純に「どちらが優れている」とはいえない

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日本とアメリカは1)先進国で経済大国、2)資本主義を標榜する民主的な国家、3)教育熱心な国民性――という共通点がありますが、日本の最高峰大学である東大と、アメリカのトップ大学のハーバード大はかなり違います。

このように紹介すると、「東大はハーバード大の足元にも及ばないはず」と、身内に厳しい見方をする日本人もいるかもしれませんが、それは正しい認識とはいえません。進学先として東大かハーバード大かで悩んでいる受験生が注目しなければならないのは、この2つの大学に課せられている役割です。

例えば、将来、日本を安定させる人材になりたいなら東大に、世界を発展させる人材になりたいならハーバード大に進むという選択方法もあります。
両者の相違点を明らかにします。

世界ランキング、6位のハーバード大と42位の東大

国際的な調査「THE世界大学ランキング」が2018年9月に発表したところによると、ハーバード大は世界6位、東大は世界42位という結果でした。
トップ10は、1位オックスフォード大(英)、2位ケンブリッジ大学(英)、3位スタンフォード大(米)、4位マサチューセッツ工科大(米)、5位カリフォルニア工科大(米)、6位ハーバード大(米)、7位プリンストン大(米)、8位イェール大(米)、9位インペリアル・カレッジ・ロンドン(英)、10位シカゴ大(米)でした。

世界42位の東大は日本の大学のトップで、日本勢2位の京大は世界65位でした。
日本勢の3位以下は、大阪大、東北大、東京工業大(以上、世界251~300位)、名古屋大(世界301~350位)、藤田保健衛生大、北海道大、九州大、帝京大(以上、世界401~500位)などとなっています。

アジアに目を向けると、中国の清華大は世界22位、北京大は世界31位、シンガポール国立大は世界23位でした。

THE世界大学ランキングは、5項目で評価されます。その項目と、ランキングへの影響度は次のとおりです。教育力(学習環境)30%、研究力30%、論文引用数(研究の影響力)30%、国際性7.5%、産業界からの収入(知識移転)2.5%

東大は総合評価では42位に沈んだものの、教育力は16位、研究力は19位でした。

6位と42位と聞くと、「まるで勝負にならない」ように感じるかもしれませんが、そうではありません。なぜなら大学の力は5項目だけで決まるものではないからです。例えば、東京大学名誉教授で、東大とハーバード大の両方で学生を教えてきた柳沢幸雄氏は「東大生とハーバード大生の学力差はほとんどない」と断言しています(*)。

その見解は、世界第3位の経済大国である日本を代表する東大なので、当然といえば当然といえそうです。柳沢氏の見解についてはあとで詳しくみていきます。

処理能力の東大と挑戦能力のハーバード大

日米双方のトップ大学に精通している専門家は、東大とハーバード大の教育の違いを次のように表現しています。
・東大:先を見通せる状態で高い処理能力を身につけさせるのが得意
・ハーバード大:先が読めない状態で不確実性に挑戦する能力を身につけさせるのが得意

優秀な官僚を育成する義務

東大は多くのキャリア官僚を輩出しています。官僚とは財務省や国土交通省などの国の機関で働く国家公務員のことです。その国家公務員のなかでも、国家公務員一種という試験に合格した人をキャリア官僚(高級官僚)と呼びます。

キャリア官僚と聞くとマスコミに叩かれているイメージがありますが、それはほんの一握りの不届き者のことであり、エリートゆえに大きく騒がれてしまうだけです。ほとんどのキャリア官僚は優秀で、国益のために働いています。

日本国憲法では、法律は国会(立法府)にいる政治家たちがつくることになっていますが、実際の法律はほとんどキャリア官僚たちがつくっています。キャリア官僚たちの所属先は行政府になるので、つまりキャリ官僚は、政治(立法府)も行政も牽引していることになります。

日本は、国内情勢に目を向ければいろいろな問題を抱えてはいますが、世界的には民主的で安定している経済先進国です。つまり日本は先を見通せる国といえます。したがって国内トップの東大が、学生たちに高い処理能力を身につけさせるのは理にかなっているといえます。

先駆者を育成する義務

世界経済のトップに君臨している4企業は、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンで、頭文字をとってGAFAといいます。いずれもアメリカの企業です。フェイスブックの創設者兼CEOのマーク・ザッカーバーグ氏はハーバード大を中退しています。また、4強入りは逃したものの、やはり世界経済の成長エンジンになっているマイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏もハーバード大中退です。

2人とも中退をしていますが、世界のインフラになっているITとWebをゼロから築き上げた数少ないメンバーのうち2人もハーバード大に在籍していたのは驚くべき事実といえます。さらにハーバード大は、ジョン・F・ケネディ氏、バラク・オバマ氏といった日本でも人気が高い大統領も輩出しています。

アメリカは、経済でも軍備でも世界のトップをひた走る先駆者です。そして先駆者の視線の向こうはいつも先がみえません。ハーバード大が不確実性に挑戦する能力を学生に授けようとしているのは、やはり理にかなっています。

受験生は自分の希望と資質を見極めよう

東大かハーバード大か。もしこの2つの大学に入ることができる学力がある場合、どちらを選択したらいいのでしょうか。日本の安全と平和と安定と発展を守りたいのなら東大、世界を驚かすことをしたいならハーバード大という選び方はできると思います。

また、希望だけでなく資質も考えてみましょう。ここではあえて、両大学のネガティブな面を考えてみます。

東大生は常に正解を出し続けなければなりません。東大自体は「人類文明に貢献すること」や「社会の要請に応える研究活動の創造」を学生に求めていますが(*)、相当保守的な風土であると覚悟する必要があるでしょう。これを窮屈と感じる人もいるはずです。

一方、日本人がハーバード大に進学するには、当然ですがアメリカに渡らなければなりません。アメリカは世界で最も過酷な競争社会であり、多くの人種が集まっています。そのなかの最高学府で、島国生まれ島国育ちの日本人が学び続けるには、強いメンタルが必要になります。

知識や教養や語学力だけでは太刀打ちできないでしょう。ハーバード大に憧れるものの、そこまでタフな状況を受け入れがたいのであれば、東大とハーバード大の中間的な存在の京大を選んだほうがいいかもしれません。東大かハーバード大かを決めることは、簡単なことではありません。

自信満々のハーバード大生と自信なさげな東大生

先ほど紹介した柳沢氏は、ハーバード大生は常に自信満々で、東大生は大体自信なさげだと指摘します。

柳沢氏はハーバード大で教えた後に帰国し、母校東大で教壇に立ったとき、ショックを受けたといいます。それは東大生たちの目が「死んでいるよう」だったからです(*)。柳沢氏が教壇から学生たちに質問をしても、その学生は隣の学生とアイコンタクトを取るだけで口を開かなかったそうです。それが何度か続いたとき、柳沢氏は「君に話しかけているんだぞ」と切れました。

では、ハーバード大生はどうだったかというと、こちらは講義中に勢いよく発言するものの、「結構いい加減なことを言っている」学生も多かったそうです。

柳沢氏は、なぜ日米のトップ大学の学生気質がこうも見事に真逆なのか、考えてみました。柳沢氏は、東大生は子供のころから喋る機会を奪われてきたからではないか、と推測しています。東大に入ることができる人は、小学生のころから勉強ができたはずです。日本の小学校では、勉強ができる子供は「ガリ勉」と揶揄される存在です。

また、小学校の先生も、授業中に児童たちに質問するとき、将来東大に入る子供には聞きません。なぜなら答えがすぐに出てしまうからです。そのような小学校の様子を知っている親は、秀才である自分の子供に、頭のよさを誇示しても得することがないから学校では黙っていなさい、と教えます。

このように日本では、頭のよい人は寡黙になりやすいのです。柳沢氏は、開成中学と開成高校の校長を歴任しているので、東大生たちの子供のころをよく知っています。

ではなぜハーバード大の学生は「私が、俺が」と前に前に出てくるのでしょうか。柳沢氏は、ハーバード大生は、発言しないことは存在しないことと同じであると考えているからではないか、と推測しています。

柳沢氏はハーバード大生の自信満々の態度のほうが、東大生の自信がなく無口な態度より、よいだろうと述べています。それは、喋ることで思考が回転し続けるからです。柳沢氏が考える平均的な東大卒者は、東大入学まで驚異的に成長し、社会に出ると学生時代までの「貯金」で生きていき、40代で貯金が尽きて伸び悩むという姿です。もちろんこれは柳沢氏の個人的な見解で、そうではない東大卒者はたくさんいるはずです。

一方、平均的なハーバード大生は、とりあえず自分が今持っている知識を総動員して主張して、反論されて論破されたらまた知識を積んで次の発言の機会を待つ、という姿勢でいます。人は、他人とぶつかることで成長するので、ハーバード大生は社会に出ても伸び続ける、と柳沢氏は考えています。

柳沢氏のこの見解も、東大かハーバード大かで悩んでいる受験生の参考になるのではないでしょうか。自分の性格に合った大学を選ぶことも進学先を決めるうえで大切です。

「やりたいことがあるなら」東大、「可能性を広げるなら」ハーバード大

ソフトバンクのCEO、孫正義氏が立ち上げた孫正義育英財団の財団生で、NPO法人留学フェローシップ代表理事の髙島崚輔氏は、東大で半年間学生生活を送ったあと、ハーバード大で2年間学び、そのあと世界中の再生可能エネルギーの現場を視察した経験があります。髙島氏の経験も、東大かハーバード大かの選択に悩む受験生の役に立ちそうです。

「純ジャパ」の試練

髙島氏はハーバード大に入るまで、海外で生活した経験はありません。それで自身のことを「純ジャパ」と称しています。その純粋日本人は、ハーバード大に挑戦しようと思い立ったとき、まずはとにかく多くの海外大受験の先輩たちにアドバイスを求めました。それによってアメリカに行くモチベーションが強化されたそうです。

そして、ハーバード大での生活は「挑戦の連続」でした。講義では課題が山のように出され、予習も復習も欠かせません。ハーバード大では課外活動が重視されるのですが、髙島氏が希望するものは志望者が多く、選考に勝ち抜かなければなりませんでした。そして、最もタフな経験だったのが、自分とまったく異なるバックグラウンドを持つ学生との共同生活でした。髙島氏はホームシックにかかる暇すらなかったと振り返ります。

試練をくぐり抜けて得られたもの

髙島氏がハーバード大の試練をくぐり抜けて得られたものはとても大きなものでした。髙島氏はハーバード大で2年間学び、休学して今度は世界に飛び出しました。先ほど紹介したとおり、再生可能エネルギーの可能性を探るためです。

しかし、なぜ学生の身分で世界中の再生可能エネルギーを視察することができたのでしょうか。それはハーバード大の人脈を使ったからです。視察したい国の出身者をハーバード大で探し、そのつてを頼ったのです。

東京のメリットとハーバード流の違い

髙島氏は、東大かハーバード大かで悩んでいる受験生にとって、とても参考になるアドバイスを残しています。それは、「やりたいことがある人」は東大へ、「可能性を広げたい人」はハーバード大に入ったほうがよい、というアドバイスです。

髙島氏は、東大が東京にあることを重視しています。東京は世界で唯一、政治、経済、学問の中心地になっている都市です。アメリカは、政治はワシントンD.C.、経済はニューヨーク、学問はボストンとわかれています。

したがって、やりたいことがある人は「東大→東京」という最短ルートを進めばよいのです。また、東大は理類、文類となっているものの、入学時点で学部は大体決まっています。入学してから学びたいことを変えることは苦労が要ります。

一方のハーバード大は、入学してから専攻を変えることは比較的自由に行えます。実際、経済を専攻していた学生が統計に興味を持って数学専攻に転身する、といったことは珍しくないそうです。ハーバード大を含むアメリカの大学は「人はいきなり100%自分に合った決定を下せない」と考えています。つまり、学びながら自分の進む道を考えるのがハーバード流です。

まとめ

東大かハーバード大かで悩む受験生は、それほど多くはないでしょう。しかし、東大を狙っている受験生は、それよりは多く存在しているはずです。その両者とも、日本を背負うか世界を背負うかの違いはあっても、大きなものを背負うエリートになることは間違いありません。受験生が今、東大とハーバード大について考えることは、「その大学で学ぶ意義」を考えることにつながるでしょう。

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