【東大と京大】医学部医学科はどこが同じでどう違うのか

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東大医学部医学科と京大医学部医学科は、いずれも国内最高峰の医師養成機関という点で共通しています。また、入学が最も難しい大学、という点も同じです。「最高の医学教育を受けたい」「最高の設備・施設で研究したい」と考えている受験生は、どちらを受験するか迷うところでしょう。そこでこの記事では、2つの医学部医学科が、どこが同じで、どう違うのかを、理念や教育方法を比べることで明らかにしていきます。

「理念」はこんなに違う

医学部には看護師を養成する学科や健康科学を研究する部門もありますが、この記事ではこれ以降、医師を養成する医学科のことを「医学部」と呼びます。

まずは、東大医学部の理念と、京大医学部の理念を確認しておきましょう。

東大医学部の理念

東大医学部の目的は、次のとおりです。

1)生命科学、医学、医療の分野の発展に寄与する
2)国際的指導者になる人材を育成する
3)問題の的確な把握と解決のために、創造的研究を遂行する
4)臨床では、研究の成果を使って全人的医療を実践する能力を獲得する

わずか4行ですが、ここにすでに、東大医学部らしさが現れています。ひとつずつみていきます。

<生命科学、医学、医療の分野の発展に寄与する、について>
練り上げられた文章には「重要な内容を先に持ってくる」という法則があります。そのため、「生命科学、医学、医療」の順に書かれてあることは重要です。それからすると、東大医学部では「医療より医学を、医学より生命科学を重視している」ことがわかります。生命科学と医療と医学は似た概念に感じますが、どのように違うのでしょうか。

生命科学とは、世の中のすべての生命を研究する学問です。
医学とは、人体を研究して、病気の原因を究明したり、治療法を開発したりする学問です。
医療とは、生命科学や医学の知見を使って、健康の維持・増進を図ったり、病気を治したりする取り組みです。

言葉の概念の大きさとしては「生命科学>医学>医療」となります。東大医学部では、単なる医療や単なる医学だけでなく、生命の根源まで突き詰める、というわけです。そして、東大医学部生は、生命科学と医学と医療を「学ぶ」だけにとどまらず、これらを「発展」させていかなければなりません。

<国際的指導者になる人材を育成する、について>
理念の2番目は、「国際的指導者になる人材を育成する」です。この言葉のポイントは、「国内外の指導者」と書いていないところでしょう。しかし、国際的な指導者になるには、その前に、当然、国内で指導的な立場になっていなければなりません。

つまり、「国際的指導者になる人材を育成する」の言葉には、「国内の指導者になることは当然として」という気持ちが含まれています。「東大プライド」がしっかりみえます。

<問題の的確な把握と解決のために、創造的研究を遂行する、について>
医学や医療には、さまざまな問題があり、医師たちはその問題を把握して、解決に努めなければなりません。では、東大医学部ではどのようにして問題把握と問題解決を図るのかというと、「創造的研究によって」です。

創造とは、これまでになかったものを新たにつくることです。東大医学部生には、これまでに開発された医学や医療を獲得するだけでなく、新たな医学や医療をつくっていくことが求められます。

<臨床では、研究の成果を使って全人的医療を実践する能力を獲得する、について>
臨床とは、実際に病気の人を診察したり治療したりすることです。つまり一般の人にとっての「お医者さん」こそ、「臨床をする医師(臨床医)」です。

東大医学部では、臨床が4番目に来ています。もちろん、東大医学部が臨床を軽視しているわけではありませんが、この並び順からすると、生命科学、医学、医療を発展させたり、国際的な指導者になったり、創造的研究を遂行することよりは、優先度が落ちると考えてよさそうです。

京大医学部の理念

続いて、京大医学部の理念を確認していきます。

1)医療の第一線で活躍する優秀な臨床医とともに、次世代の医学を担う医学研究者、教育者を養成する
2)単に既存の知識を応用して医療にあたるだけでなく、病気など医学事象の背後にあるものを見抜く人材を養成する
3)自分の頭で考え、新たな知を創出できる人間を養成する
4)広く社会と人間行動を理解して、病める人の感情を洞察できる人間を養成する
5)社会全体の健康を目指し、高い倫理観を持って行動する人間を育てる
6)人類すべてに発信できる国際性豊かな人間を育てる「ことも」京大医学部の使命である

東大医学部の理念を確認したあとに、京大医学部の理念を読むと「驚くほど似ている」ことと「微妙に違っている」ことに気がつきます。

まず理念の1番目からは、京大医学部が「医療の第一線の臨床医」と「次世代の医学を担う医学研究者、教育者」を明確に分けていることがわかります。また、京大医学部は、その両方を養成する、といっています。

理念の最初に「優秀な臨床医」を置いているところは、東大医学部とは対照的です。わざわざ「優秀な」という枕詞をつけるところに「京大プライド」を感じますが、それでも「街のお医者さん」をリスペクトしていることは、伝わってきます。

ただ、理念の2番目で、わざわざ「単に既存の知識を応用して医療にあたるだけでなく」と述べている点が気になります。これも京大プライドと考えてよさそうです。

京大医学部は学生に、「うちを卒業した以上は、単なる一般的な臨床医ではなく、優秀な臨床医を目指すか、医学研究者か、教育者になってほしい」といっているのでしょう。

3番目に「新たな知を創出できる人間」とあります。これは、東大医学部の理念にあった「創造的な研究」と酷似しています。

京大医学部らしさは、4番目の「病める人の感情の洞察」と5番目の「高い倫理観」に現れています。東大医学部の理念には登場しなかったワードであり、概念です。もちろん、だからといって東大医学部が「病める人の感情の洞察」と「高い倫理観」を軽視しているわけではありません。東大医学部は「当然のことだから、わざわざ書かなかった」と考えているのかもしれません。

しかしそれだけに、「わざわざ書いている」京大医学部は、「病める人の感情の洞察」と「高い倫理観」を、とても重視していることがわかります。

「病める人の感情の洞察」して「社会全体の健康を目指す」(理念5番目)ことは、臨床医の仕事と重なります。「病める人の感情を洞察」するには、医師が患者ひとりひとりに向き合わなければなりません。 ここからも、京大医学部の臨床医へのリスペクトが感じられます。

そして、東大医学部は「国際的指導者の育成」を、理念の2番目に挙げていましたが、京大医学部は「国際性豊かな人間育成」を、ようやく6番目に挙げています。しかも「ことも」とわざわざことわっています。「ことも」には、メインではなく付属的な、というニュアンスがあります。

2つの理念からみえてくるもの

2つの理念を丹念に読み込むことで、東大医学部も京大医学部も「医学の指導者の育成」「新しい医学の創生」「国際的に活躍できる医師の養成」を責務にしていることがわかりました。 さすが日本最高峰の医学部、といった印象を抱くのではないでしょうか。

ただし、臨床の優先順位が低い東大医学部に対し、京大医学部は臨床を最優先に考えている点が、大きく異なります。

ここで注意したいのは、優先順位の高さは重要度を示すが、優先順位の低さは必ずしも軽視を意味するわけではない、ということです。東大医学部は、臨床を軽視しているのではなく、その他のことを優先したために、相対的に優先順位が下がった、と考えるべきでしょう。
東大医学部と京大医学部のどちらを受験しようか迷ったら、理念で比べてみてもよさそうです。

「勉強の進め方」はこんなに違う

東大医学部と京大医学部では、勉強や研究の進め方も異なります。

東大医学部の勉強の進め方

東大医学部の勉強の進め方の最大の特徴は、入学当初から「医学漬け」にならないことです。東大生は、医学部に行く人も、他学部に行く人も、まずは2年間、教養学部に所属して一般教養を学びます。

ちなみに、東大医学部に入るには理Ⅲに入らなければならない、といわれていますが、これは厳密には正しくありません。

理Ⅲの定員は100人ですが、そのうち3年生になって医学部に入ることができるのは97人だけです。医学部に入れなかった3名は他学部に入るなどしなければなりません。医学部の定員は110人で、そのうち理Ⅲの97人を除いた13人の内訳は、理Ⅱから10人、その他の全科類から3人となっています。文系の科類である、文Ⅰ、文Ⅱ、文Ⅲからも医学部に入ることができるわけです。

3年生から医学部に所属することになります。3、4年生は、基礎医学と社会医学を学びます。
基礎医学とは、解剖学や生理学、生化学、ガンや免疫や脳の研究などのことです。社会医学とは、医療倫理学や統計学、医療経済学、公衆衛生学などのことです。

臨床医学は、4年生から始まりますが、基礎医学と社会医学の単位をすべて取っておかないと、5年生に進級できず臨床実習を受けられません。臨床医学では、次のことを学びます。

内科学、小児科学、外科学、脳神経外科学、精神医学、形成外科学、小児外科学、産科学婦人科学、整形外科学、眼科学、耳鼻咽喉科学、皮膚科学、泌尿器科学、放射線医学、麻酔科学、口腔外科学、救急医学、リハビリテーション医学、臨床検査医学、医療情報学、輸血学、感染制御学など多岐に渡ります。

一般の人が出会う「お医者さん」は、内科医や外科医、整形外科医と専門がわかれていますが、医学部生はすべての医学・医療を学びます。

5年生から始まる臨床実習は、東大病院で行います。学生は6、7人のグループになり、それぞれの臨床科に1~3週間配置されます。そして、実際に入院患者を担当して、診察や診断を行い、ときに手術にも立ち会います。

京大医学部の勉強の進め方

京大医学部生は1年生から医学部に配属されますが、1年生は東大生と同じように一般教養を学びます。ただ、京大医学部では1年生から「医学部らしい学び」もあります。医学部の研究室で研究方法を学ぶラボ・ローテーションや、医療機関でボランティアを行う外来患者支援実習や病棟体験実習に参加したりしなければなりません。

2年生でも一般教養を学びますが、英語で医療関係のコミュニケーションを取る「科学英語(医学)」といった、特殊な講義があります。また、解剖学、生理学、病理学を分子レベルや細胞レベルで学ぶ「レベル・システム方式」による医学教育も2年生から始まります。

3、4年から、専門的な医学知識とともに、患者とのコミュニケーションやチーム医療について学んでいきます。

4年生になると「マイコース・プログラム」が始まり、京大が世界に誇る研究室や海外の大学、研究機関に配属されます。マイコース・プログラムでは自主的な研究をします。これは、とても「京大らしい」といえます。なぜなら、医学部4年生は、医者の卵にすらなっていない状態です。その状態の学生に、世界最先端の研究に触れさせ、しかも「学ぶだけ」でなく「自主的な研究」をさせるからです。

5、6年生は、実際に京大病院や関連病院に出て、臨床実習を行います。すべての診療科を短期間で巡るのは東大医学部の臨床実習と同じです。さらに、移植医療や分子治療、再生医療といった、世界レベルでの最先端の臨床も体験できます。

まとめ

受験業界の習慣から、先に東大医学部を紹介し、その次に京大医学部について記してきましたが、この2者は完全に「同率1位」といえます。最高の医学を学びたいと思ったら、どちらに行ってもよいでしょう。

しかし同率1位だけに、両者の違いは、大きなものになります。名実ともに日本の医療界のトップに君臨しようとする東大医学部と、臨床を重視して本質を求め自由を尊重する京大医学部は、キャラクターが異なります。

東大医学部向きの人が京大医学部に入ると「威厳不足」を感じるかもしれません。京大医学部向きの人が東大医学部に入ると「自由不足」を感じるかもしれません。どちらに行っても、最先端の医学と最高の医療を学べるので、どちらを選ぶかは、最後は受験生の好みにかかってくるでしょう。

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