東大経済学部はどれくらい「すごい」のか

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官僚を養成する法学部や、日本一入るのが難しい医学部、ノーベル賞の理学部、工学部、文学部と比べると、東大経済学部は一般の知名度がそれほど高くないかもしれません。しかし、東大の経済学部なので、何か「すごい」ところがあるはずです。そのすごさを紹介しながら、東大経済学部で学べることを解説します。

東大経済学部の卒業者は「どのような仕事」をしているのか

まずは、東大経済学部を卒業した人たちの活躍ぶりを紹介します。

愛嬌とすごみの両面を持つ経済学者、森永卓郎さん

テレビ番組のコメンテーターとして知られている森永卓郎さんは、東大経済学部を卒業しています。森永さんといえば、小柄で童顔、趣味はおもちゃ集めという愛嬌あるキャラクターが特徴になっています。また、難しい経済問題を優しい語り口でわかりやすく解説してくれます。そのため、テレビで見る森永さんからは「すごみ」を感じることができませんが、経歴をみると「ゆるキャラ」のイメージは吹き飛ぶでしょう。

森永さんのこれまでの経歴は次のとおりです。
・日本専売公社(現、日本たばこ産業)社員
・公益社団法人日本経済研究センター職員
・経済企画庁総合計画局職員
・三和総合研究所(現、三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング)主席研究員
・獨協大学教授(2019年12月現在)

日本経済界のエリート街道を歩んでいることがわかります。森永さんの専門分野は「マクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画」で「経済の難しいところ」を真面目に取り組んできた人でもあります。

そして森永さんは、実は「骨のある」経済評論家でもあります。NHKのインタビューで平成時代を振り返ってもらい、次のように答えています。

・平成の日本は「転落と格差」の30年間だった
・世界のGDPに占める日本のGDPの割合は、1995年(平成7年)は18%あったが、直近は6%にまで落ちている。つまり世界経済への影響力は3分の1にまで縮小した
・転落の一因は、政府の構造改革と不良債権処理で、この2つの政策により潰す必要がない企業が潰れていったから
・労働分配率が落ちたことによって格差が助長された
(労働分配率とは:企業などが生産した付加価値のうち、給料など人件費に回された割合)
・日本には資産1億1,000万円以上持っている富裕層が316万人いて、この数はアメリカに次ぐ世界2位だが、この人たちの大部分が働いていない

問題意識の強さと反骨精神がうかがえる発言であると感じるのではないでしょうか。森永さんがすごいのは、こうした主張のすべてにエビデンスを持っていることです。エビデンスとは根拠や証拠のことです。森永さんは経済指標や経済動向を分析し、その知見を「今の日本はおかしい」「こうすれば日本はもっとよくなる」という主張に使っています。

しかも森永さんは、周囲の人たちに柔和な印象を与えるしたたかさを持っているので、森永さんの主張には多くの人が耳を傾けます。この地頭(じあたま)のよさとスマートなやり方は、東大経済学部卒者の特徴といえるでしょう。

波乱の時期に金融の舵取りをした前日本銀行総裁、白川方明さん

東大経済学部卒の白川方明さんが日本銀行総裁を務めたのは、2008年4月から2013年3月までの5年間です。

日本経済は2008年に、リーマン・ショックという世界的な経済「事件」によって大ダメージを受けます。そこから立ち直って、景気浮揚の兆しが現れたのは2013年です。つまり白川さんは、最も困難な時期に日本の金融の舵取りを任されたのです。

一国の経済にとって、景気はよいほうがよい、とされています。つまり、不景気は悪いことです。そこで政府と日銀は、景気がよい時代は現状維持を図ろうとして、不景気の時代は景気を持ち上げようとします。

政府は、法律による規制と規制緩和と財政投入で企業活動を活性化させて景気をよくしようとします。また、日銀は、お金の供給量を調整して景気をよくしようとします。

そういった意味で、政府と日銀と経済界は協力して日本経済に尽くしていくわけですが、その一方で、日銀は政府からも経済界からも独立していなければなりません。なぜなら、日銀の金融政策が「政治の道具」や「経済界に甘い内容」になってしまうと、いびつな経済になってしまうからです。

白川さんは東大経済学部を卒業してすぐに日銀に入行しました。日銀で大分支店長やニューヨーク駐在、理事などを歴任したのち、京大教授に転身し、その後、副総裁として日銀に復帰して、頂点の総裁に登りつめました。

生粋の日銀パーソンだった白川さんは、日銀を「経済・金融の安定を実現する社会の装置」と位置付けています。

政治家も経済界も、目先の景気拡大を優先しがちですが、それでは短期的には成功しても、かえって長期的な安定性が損なわれることがあります。そこで、政府や経済界から独立した日銀が、長期的な持続性の観点からお金を管理する必要があるわけです。

白川さんは、「一般の方々に『日銀は頑固なことも言うけれど、長い目で見て経済の安定のために存在している組織』であることを知ってほしい」と訴えています。

一国の経済は、結局は、1)国民がどれだけ一生懸命働くか、2)どれだけ知恵を絞ってイノベーションを起こせるか、の2点にかかっています。

日銀は、金融環境を安定させることで、この2つのことが起こりやすい社会にするわけです。だから日銀は「経済・金融の安定を実現する社会の装置」なのです。東大経済学部を出て日銀に入ると、日本経済を動かす仕事に就くことができます。

東大経済学部で何を学べるのか

東大経済学部の正式名称は「東京大学大学院経済学研究科・経済学部」です。2019年4月に、東大経済学部は創立100周年を迎えました。東大経済学部の役割について、渡辺努・経済学部長(2019年12月現在)は次のように述べています。

「現代社会を成り立たせる経済の仕組みや多くの人々が日々の糧を得る企業活動、さらに金融の役割などを中心にして、経済・経営・金融に関する幅広い分野を研究すること」
そして「日本の経済学や経営学の研究・教育活動をリードして、学界・実業界・政府などで活躍する人材を輩出すること」です。

この言葉から、東大経済学部が、東大経済学部を目指す受験生に望むことがみえてきます。箇条書きにすると次のようになります。

1)経済を「現代社会を成り立たせている仕組み」ととらえて、それを研究したい人
2)企業活動を「人々が日々の糧を得る活動」ととらえて、それを研究したい人
3)金融を研究したい人
4)日本の経済学と経営学をリードする研究者になりたい人
5)日本の経済と経営をリードするビジネスパーソンや経営者
6)経済系の官僚や政治家や日銀パーソンになりたい人

この「6人」のうち1人でも自分の理想に当てはまれば、過酷な受験勉強に耐えてでも、東大経済学部を目指す価値はあります。

3つの学科の特徴

東大経済学部には経済学科、経営学科、金融学科の3つの学科があります。
この3学科で学べることを紹介します。

<経済学科の特徴>
経済学科の学生の研究対象は、経済社会の諸現象と諸領域です。経済社会の諸現象とは、好景気や不景気、消費活動、ビジネス、GDP、円高・円安、株高・株安、グローバル化などのことです。経済社会の諸領域とは、産業、国際貿易、財政、金融、労働などのことです。

産業には、農業などの一次産業、工業などの二次産業、サービス業の三次産業があり、日本はこの3つの産業を同時並行的に推進しようとしています。また、近年は、一二三次産業すべてに関わるIT産業も重要産業になっています。経済学科の学生は、自分の関心事を見つけて掘り下げていくことになります。

日本は、大量の資源を輸入する国であり、産業界がつくったものを大量に輸出する国でもあるので、国際貿易で成り立っている国といえます。そのため、国際貿易が経済学科の研究対象になっています。

そして、日本の財政赤字は、世界経済の大きな懸念のひとつになるほど深刻化しています。これも東大経済学部の頭脳で解決していく必要があります。

先ほど「前日本銀行総裁、白川方明さん」の章で確認したとおり、東大経済学部は、日本の最重要金融センターである日銀に人材を輩出する役割を担っているので、金融についても深く研究する必要があります。

労働は、人々の生活の営みであると同時に、労働を提供する労働者は経済の担い手でもあります。労働の対価である賃金は、企業にはコストでありながら利益につながるものでもあります。それで労働を、経済学で研究するわけです。

そして東大の経済学科では、諸現象と諸領域を、国際的な視点から巨視的に把握することが求められます。さらに、諸現象と諸領域の把握は、理論的、実証的、歴史的に分析しなければなりません。

<経営学科の特徴>
経営学科の学生の研究対象は、企業の活動です。企業はさまざまな活動をしていますが、経営学科ではそのなかでも経営管理、経営戦略、マーケティング、経営組織における人間行動に焦点を当てます。

経営管理とは、企業活動に必要なヒト・モノ・カネを管理して効率よく利益をあげていく仕組みをつくる仕事です。ただ最近は「儲ければよい」という考えだけでは、企業は生き残れなくなりました。SDGsやESG投資が注目され、利益だけでなく社会への貢献度も経営管理のなかに含まれます。

SDGsとは持続可能な開発目標のことで、ESG投資とは環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視する投資行動のことです。

経営戦略は、企業のやることを定める仕事です。企業は常に自社製品や自社サービスを更新していかなければなりません。そのためには投資や開発、生産や営業、販売が必要になります。経営戦略は、それらを事細かに決めていきます。また、最近の企業にはイノベーションが求められますが、これも経営戦略の重要な柱になっています。

マーケティングとは、消費者に働きかけて商品やサービスを効率よく売る仕事です。仕事の具体的な内容は、市場調査、製造、輸送、保管、販売、宣伝になります。経営組織における人間行動とは、経営者、管理職、一般労働者の行動のことを指します。

<金融学科の特徴>
金融学科の学生の研究対象は、資産運用、金融商品開発、企業金融、リスク管理、金融戦略、金融規制、金融システム、マクロ金融政策、通貨政策などです。経済学科の研究対象のなかにも、金融が含まれていました。金融学科は、経済学のなかから金融を取り出して深掘りしていくイメージです。

東大経済学部に入るには文二類を受験する

東大は学部ごとには学生を募集していません。文科一、二、三類と理科一、二、三類の計6類で学生を募集し、その全員が教養学部に入ります。全学生が2年間、教養学部で学び、学生が学部に移行するのは3年目からです。

東大のルールでは、すべての類からどの学部にも進学できますが、類によって行きやすい学部は大体決まっています。東大経済学部に行きたい受験生は、文科二類を受験したほうがよいでしょう。

文科二類の一般入試の試験は次のとおりです。

<センター試験(2021年1月から大学入学共通テスト)>
・国語
・数学(数1A必須、数2B・簿記・情報から1科目選択)
・理科(物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎から2科目選択)
・外国語(英語、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語から1科目選択)
・地歴(世界史B、日本史B、地理Bから1科目選択)
・公民(倫理・政経)

<個別試験(2次試験)>
・国語(国語総合、国語表現、現代文B、古典B)
・地歴(世界史B、日本史B、地理Bから2科目選択)
・数学(数1A、数2B)
・外国語(コミュニケーション英語1、3)(ドイツ語、フランス語、中国語も選択できる)

東大経済学部の卒業者の就職先

東大経済学部を卒業すれば、国内のほぼすべての就職先に就職することができるでしょう。
2017年度の卒業生の主な就職先は以下のとおりです。

<企業>
トヨタ自動車、日立製作所、任天堂、日本テレビ、日本放送協会、富士通、NTTドコモ、TBSテレビ、日本航空、伊藤忠商事、住友商事、三菱商事、三井物産、丸紅、ニトリなど

<金融>
日本銀行、三菱UFJ銀行、みずほフィナンシャルグループ、モルガン・スタンレーMUGF証券など

<公務員>
内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、金融庁、警視庁など

これらはほんの一部にすぎません。「一流」と呼ばれるところには、どこでも入ることができるでしょう。

まとめ

東大経済学部が法学部や医学部と比べて地味なのは「異色さ」が薄いからでしょう。法曹界でも省庁でも医学界でも、東大法学部卒者や東大医学部卒者は異色扱いされます。それで世間でも「東大法学部はすごい」「東大医学部はすごい」といわれるようになりました。

しかし、経済界や金融界は実力主義の部分が大きいので、東大経済学部卒者だからといって特別扱いされることは多くありません。就職のときはさすがに「東大扱い」されますが、それでも入社から数年が経過して実績を残せなければ、実績を残している他大学卒者のほうが「偉く」なります。東大経済学部卒者で有名になった人は、「東大の看板」だけに頼らず、実力を磨いています。

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