東大の選抜は、学部ではなく「科類」ごとに募集している点が特徴です。科類は6つに分かれており、所属する科類によって必修科目が異なります。入学後のミスマッチを防ぐには、得意科目や進路を踏まえて、自身に合った科類を選ぶことが重要です。
本記事では、東大の科類ごとの違いについて解説します。各科類のカリキュラムや難易度、向いている人の特徴などを紹介するので、東大の受験を検討している人はぜひ参考にしてください。
東大の科類の仕組み

まず、東大の科類の仕組みや科類ごとの違いを解説します。
前期課程は6つの科類に分かれる
東大に入学すると、全員が教養学部に所属します。1・2年次の前期課程で6つの科類に分かれ、幅広い分野を学習できる点が特徴です。一人ひとりの希望や成績により、3年次に所属する学部が決定します。
大学に入ってから学びたい内容をじっくり検討できるところが、東大に入る最大のメリットです。高校生の間に進路を決められない人に向いている大学といえるでしょう。
各学部には定員を設けている
東大の進学先の学部には「指定科類枠」と「全科類枠」が設けられています。指定科類枠とは、科類ごとに割り振った枠のことです。全科類枠は、どの科類の学生でも志望できる枠を指します。
全科類枠を利用すると、一部の学科を除いて文転・理転が可能です。ただし「要求科目」を定めている学部に進学したい場合、該当する科目を必ず履修しなくてはなりません。留年しない限り、履修できないような要求科目を設定している学部もあります。
指定科類枠で進学できる学部は?
指定科類枠で進学できるおもな学部は、以下のとおりです。
| 科類 | 学部 |
| 文科1類 | 法学部、教養学部 |
| 文科2類 | 経済学部、教養学部 |
| 文科3類 | 文学部、教育学部、教養学部 |
| 理科1類 | 工学部、理学部、薬学部、農学部、医学部 |
| 理科2類 | 農学部、薬学部、理学部、工学部、医学部 |
| 理科3類 | 工学部、理学部、薬学部、医学部 |
それぞれの科類が設定している要件を満たさなければ、進学選択に参加できません。進学選択に参加できたとしても、学部から内定が貰えなかった場合には降年(こうねん)してしまいます。降年とは、進級要件を満たせない場合に1学年下に降格して学び直すことであり、東大特有の表現です。
進学希望者が定員数を超えた場合、前期課程の成績に応じて進学の可否が決まります。成績を上げるためにあえて降年し、希望する学部へ進学する方法もあります。
東大の科類によってカリキュラムに違いはある?

ここからは、東大の科類ごとの概要やカリキュラムを解説します。各科類で学ぶ内容に違いがあるのかを確認していきましょう。
文科1類:法・政治がメイン
文科1類は、法・政治をメインに、社会科学全般の基本的な内容を勉強する科類です。人文科学や自然科学への理解を深めつつ、人間と社会についての幅広い知識を身に付けます。
文科1類に所属する場合、法あるいは政治の授業が必修です。言語系・文系・理系科目は、バランス良く配分されています。理系科目も必修となっていますが、文系寄りの授業も選択可能です。
文科2類:経済がメイン
文科2類は、経済をメインに、社会科学全般の基本事項を勉強する科類です。人文科学や自然科学への理解を深めつつ、人間と組織にまつわる幅広い知識の獲得を目指します。
文科2類に所属する場合、経済あるいは数学の授業が必修です。言語系・文系・理系科目の配分は、文科1類と変わりません。
文科3類:言語・思想・歴史学がメイン
文科3類は、言語・思想・歴史学をメインに、社会科学全般の基本事項を勉強する科類です。社会科学や自然科学への理解力を高めながら、人間と文化的・社会的営為についての幅広い知識を習得します。
文科3類には、文科1類や文科2類のような必修科目がありません。言語系の科目の配分を増やせるため、語学を得意としている人は成績を高めやすいです。なお、文科3類は、進学可能最低点がほかの科類よりも高い傾向にあります。希望する学部に進学するには、文科1類や文科2類よりも高い成績が必要となるケースがあります。
理科1類:数学・物理学がメイン
理科1類は、数学・物理学をメインに、数理科学や生命科学、物質科学の基本事項を勉強する科類です。自然の基礎法則への探究心を培いながら、科学・技術と社会にまつわる幅広い知識の習得を目指します。理科2類や理科3類と比べると、数理科学の授業を多く履修しなくてはなりません。
理科1類の入学者は毎年1,000人を超え、6つの科類のなかでは最多の人数です。
理科2類:生物学・物理学がメイン
理科2類は、生物学・物理学をメインに、数理科学や生命科学、物質科学の基本事項を勉強する科類です。自然の諸法則についての探究心を育み、科学技術や社会に関する幅広い知識の習得を目指します。理科1類と比べると、生命科学の授業を多く履修する必要があります。
理科2類への入学者は毎年500人程度であり、理科1類の半数程度です。
理科3類:生物学・物理学がメイン
理科3類は、生物学・物理学をメインに、数理科学や生命科学、物質科学の基本事項を勉強する科類です。人間についての探究心を身に付けながら、生命と社会のかかわりについて幅広い知識の習得を目指します。理科2類と同様に、生命科学の授業を多く履修する必要があります。
理科3類への入学者数は毎年100人程度であり、6つの科類のなかで最も少ない人数です。偏差値や倍率も毎年高く、東大のなかで最難関の科類といわれています。
東大の科類ごとの難易度を比較

東大の科類はそれぞれカリキュラムが異なりますが、難易度にも違いがあるのでしょうか。以下では、東大の科類ごとの偏差値や倍率などを比較して見てみましょう。
東大の科類ごとの偏差値
以下は、東大の科類ごとの偏差値をまとめた表です。
| 科類 | 偏差値 |
| 文科1類 | 67.5 |
| 文科2類 | 67.5 |
| 文科3類 | 67.5 |
| 理科1類 | 67.5 |
| 理科2類 | 67.5 |
| 理科3類 | 72.5 |
※2025年1月時点
6つの科類のなかでは、理科3類の偏差値が最も高いことがわかります。理科3類以外の科類の偏差値はすべて67.5であり、偏差値で見た場合の難易度に差がありません。
東大の科類ごとの倍率
以下は、東大の科類ごとの倍率をまとめた表です。
| 科類 | 2024年度倍率 | 2025年度倍率 |
| 文科1類 | 2.9 | 2.8 |
| 文科2類 | 3.0 | 2.8 |
| 文科3類 | 3.2 | 2.8 |
| 理科1類 | 2.8 | 2.5 |
| 理科2類 | 4.2 | 3.5 |
| 理科3類 | 4.3 | 4.0 |
6つの科類のなかでは、理科2類と理科3類の倍率が高い傾向にあります。2年連続で理科3類の倍率が最も高いです。
文系科類を比較すると、2024年は文科3類が高倍率だったものの、2025年になると差がなくなっています。
東大の科類ごとの合格最低点
以下は、東大の科類ごとの合格最低点をまとめた表です。
| 科類 | 合格最低点 |
| 文科1類 | 226 |
| 文科2類 | 210 |
| 文科3類 | 623 |
| 理科1類 | 703 |
| 理科2類 | 682 |
| 理科3類 | 691 |
※2024年度 前期(第1段階選抜)
文系科類のなかでは、文科3類の合格最低点が最も高いことがわかります。理系科類を比較すると、理科1類の合格最低点が最も高いものの、大きな差はありません。
東大の各科類はどのような人におすすめ?

以下では、東大の各科類それぞれにおすすめの人の特徴を紹介します。どの科類を受験すればよいか迷っている方は、ぜひ確認してみてください。
文科1類がおすすめの人
文科1類への受験がおすすめの人の特徴は、以下のとおりです。
・法学部を目指している人
・司法試験を受けたい人
法学部は、文科1類からの指定科類枠を多く設けています。法学部へ進学したい場合は、文科1類の受験がおすすめです。また、国家公務員試験や司法試験の受験を検討している場合も、文科1類を選ぶとよいでしょう。同じ夢を持つクラスメイトを見つけやすく、切磋琢磨しながら熱心に勉強できます。
文科2類がおすすめの人
文科2類への受験がおすすめの人の特徴は、以下のとおりです。
・経済学部への進学を考えている人
・文系でありながら数学が得意な人
経済学部は、文科2類の指定科類枠を多めに設けています。文科2類に所属すると、経済学部への進学が容易になるでしょう。また、文科2類の場合、経済もしくは数学の授業が必修です。文系の科類でありながら、数学の重要度が高くなっています。
文科3類がおすすめの人
文科3類への受験がおすすめの人の特徴は、以下のとおりです。
・語学を深く学びたい人
・文学部に進学したい人
・理系科目にも興味がある人
文科3類はほかの科類と比べると、言語に関する授業を多めに受ける必要があります。文科1類や文科2類よりも社会科学系の必修科目が少なく、好きな授業を履修しやすい点が魅力です。また、文系科類のなかでは理系科目の配分が多くなっています。
理科1類がおすすめの人
理科1類への受験がおすすめの人の特徴は、以下のとおりです。
・物理や数学が得意な人
・入試で生物を選択しない人
・工学部や理学部への進学を検討している人
理科1類は、物理や数学の科目の比重が高くなっています。生物学は、高校で勉強していないことを前提とした基礎からスタートする授業が多いです。進学選択の際、理科2類よりも高い成績を必要としないケースが多く、進学の自由度が比較的高いといえるでしょう。
また、理科1類の指定科類枠には、工学部と理学部が多めに設けられています。受験期から工学部または理学部への進学を検討している場合、理科1類を選ぶとよいでしょう。
理科2類がおすすめの人
理科2類への受験がおすすめの人の特徴は、以下のとおりです。
・生物が得意な人
・入試で物理を選択しない人
・農学部や薬学部への進学を考えている人
理科2類は、生物系の必修科目が多い科類です。一方で物理の授業は、高校レベルからスタートするコースも用意されています。また、農学部と薬学部の指定科類枠は、理科2類が多めに設けられています。後期課程からは農学部または薬学部に所属したい人は、理科2類の受験がおすすめです。
理科3類がおすすめの人
理科3類への受験がおすすめの人の特徴は、以下のとおりです。
・医学部医学科を目指している人
・高校の早い時期から受験対策に取り組める人
医学部医学科は、理科3類以外の科類からの進学枠が極端に少なくなっています。理科3類以外から医学部医学科を目指すと、競争率が非常に高まるため、多くの授業で高得点を取らなくてはなりません。医学部医学科への進学を希望する場合、理科3類から進学するほうが効率的です。
東大の科類のなかで最も偏差値が高く、入試難易度が高いため、高校の早い時期から受験勉強に励む必要があります。
まとめ

東大の科類は6つに分かれており、科類ごとに履修しなくてはならない授業や、進学しやすい学部に違いがあります。希望する学部がある場合、指定科類枠で進学が可能な科類を選びましょう。
なお、いずれの科類も偏差値が高く、入試難易度は非常に高いといえます。効率的に受験対策したい場合、塾や予備校で対策するのがおすすめです。塾・予備校を探している高校生・浪人生は「イチオシ予備校一覧ページ」をチェックしてみてください。
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