学生数は東大一!「東大理科一類」で何を学べる?
東大を目指す人にとって、まず気になるのは、他の大学と違って学部ではなく「〇科〇類」で学生を募集していることでしょう。これから紹介する東大理科一類も「〇科〇類」の一つですが、どうしてそのような形で学生を募集するのでしょうか?
また、「東大理科一類ではどんなことを学ぶのか?」「卒業後の進路」といったことも気になりますよね。この記事では、そんな東大理科一類を受験する人の疑問にお答えします。
「東大理科一類」とは?
「東大理科一類」の正式名は、「教養学部前期課程理科一類」です。教養学部前期課程に6つある科類の一つを指します。理科一類は、主に化学や物理学、数学、工学などを専門的に学びたい人が受験する傾向です。ここで、改めて東大の教育課程について説明しましょう。
東大の1~2年次は、全員「教養学部前期課程」の学生となり、学修内容は3年次以降に学ぶ専門的な学問の基礎から一般教養まで幅広い分野に及びます。また、2年次には個人の希望やそれまでの成績に応じて進学先の学部を決める「進学選択」が行われ、3年次以降は各学部に分かれてより専門的な学問を学ぶのが特徴です。
東大教養学部前期課程は、科類によって履修科目が少し異なりますが、理科一類では数学、化学、物理学など理系の基礎学問をメインに幅広い分野の学問を学びます。また、3年次には1~2年次に学んだことをベースとして工学部や理学部に進学する人が多い傾向です。一方で、教養学部や文系学部など、他の学部に進む人もいます。
東大理科一類は東大で最も学生数が多い
東大理科一類は、東大の中で最も学生数が多いことをご存じでしょうか?東大ホームページによると、2020年4月1日時点の理科一類入学者数(留学生などを含む)は1,163人です。2番目に入学者数が多い理科二類で560人、最も少ない理科三類で101人ですから、理科一類の入学者が極めて多いことがわかります。
そこに、2年生(2019年4月1日時点で1,178人)も加えれば、学生数は2,000人以上の大所帯です。 そこまで学生数が多い理由は、東大理科一類の募集人員自体が1,000人を超えている(1,108人)ことが挙げられます。だからといって、「理科一類なら楽勝で合格できるかも」と考えるのは早計です。
その理由は、東大の受験倍率や合格率を見ればすぐにわかります。例えば、2020年(令和2年)度の学生募集数は、6科類中ダントツトップの1,108人です。受験者数(留学生など特別選考の人は除く)もダントツトップの2,737人、受験倍率(実質倍率)は約2.5倍となっています。
また、合格者数(留学生など特別選考の人は除く)は1,125人、合格率は約41%です。さらに、センター試験(2021年(令和3年度)以降は「大学入学共通テスト」)の結果が悪くて足切りとなるなどの理由で、東大への出願をあきらめた人も相当数いるのではないでしょうか。
そのような潜在的な志願者数を考慮に入れれば、合格率がさらに下がることは間違ありません。総合的に勘案すると、やはり東大理一合格へのハードルは極めて高いといえるでしょう。
東大理科一類で何を学ぶ?
ここからは、「東大理科一類で何を学ぶか?」という点について説明します。
1~2年次
東大に入学すると、全員「教養学部前期課程」の学生となります。前半の1年半は、幅広く深い教養と豊かな人間性を身につけるリベラルアーツ教育を学習。後半となる残り半年は、進学予定の学部・学科で学ぶことの基礎となる専門教育科目を学びます。
東大理科一類の場合、前半は全員リベラルアーツ教育で幅広く教養を身につけ、後半は主に工学部や理学部の学修内容の基礎となる数理科学や物質科学、生命科学、あるいは他学部の基礎学問の学習。それをベースとして、3年次以降はより専門性の高い学問を究めていく形となります。
3年次以降
東大理科一類の学生が進学する先は、主に工学部や理学部ですが、教養学部後期課程や他学部に進む人もいます。まずは、主な進学先となる工学部と理学部にある学科を確認してみましょう。
工学部
| 社会基盤学科、建築学科、都市工学科、機械工学科、機械情報工学科、航空宇宙工学科、精密工学科、電子情報工学科、電気電子工学科、物理工学科、計数工学科、マテリアル工学科、応用化学科、化学システム工学科、化学生命工学科、システム創成学科 |
理学部
| 数学科、情報科学科、物理学科、天文学科、地球惑星物理学科、地球惑星環境学科、化学科、生物化学科、生物学科、生物情報科学科 |
以上の学部学科を卒業後は、就職する人もいます。しかし、工学部や理学部では多くの学生が大学院(工学研究科・理学研究科)に進学し、さらに専門的な学問を究めていく傾向です。
<大学院(工学研究科・理学研究科)の専攻>
工学研究科 | 社会基盤学、建築学、都市工学、機械工学、精密工学、航空宇宙工学、電気系工学、物理工学、システム創成学、マテリアル工学、応用化学、化学システム工学、化学生命工学、先端学際工学、原子力国際、バイオエンジニアリング、技術経営戦略学、原子力(専門職大学院) |
理学研究科 | 物理学、天文学、地球惑星科学、化学、生物科学 |
各専攻の中では、さらに研究内容が細分化され、極めてハイレベルな研究が行われ、これらの学部学科や研究科からは、多くの優秀な人が輩出されています。その代表ともいえるのが、理学部出身でノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈氏、小柴昌俊氏、南部陽一郎氏の3人(いずれも故人)です。
また、政治家や官僚、大企業の社長、教育者など、各方面の第一線で活躍している人も多数います。
東大理科一類の主な就職先
ノーベル物理学賞受賞者をはじめ、社会の第一線で活躍する優れた人材を数多く輩出してきた東大理科一類。しかし、卒業生の多くはどんなところに就職しているでしょうか?そこで、東京大学ホームページ上で公開されている最新の資料(2020年度分) をもとに、理科一類からの進学者が多い工学部と理学部の進路について、学部(大学)卒業者と大学院修了者に分けて見ていきましょう。
学部(大学)卒業生の進路と就職先
工学部と理学部の学部卒業生は、その大半が大学院に進学します。
2016年度卒業生の場合、工学部卒業生は全体の約76.4%、理学部は約85.2%の人が東大の大学院(工学研究科・理学研究科)または他の大学院に進学しています。残りの人は、就職していますが、工学部、理学部ともに民間企業に就職する人が多い傾向です。
大学院修了生の進路と就職先
大学院の修士課程修了後、引き続き博士課程に進学する人も多い傾向です。工学系研究科修士の約18.1%、理学系研究科修士にいたっては約45.1%もの人が東大または他大学の博士課程に進学しています。
<工学系研究科>
工学系研究科は、全体の約18.1%の人が東大や他大学の博士課程に進学しますが、残りの約81.9%は就職を選び、その多くは製造業を筆頭とする民間企業に就職しています。また、博士課程修了者および満期退学者もその多くが民間企業に就職する傾向です。しかし、業種別では専門性の高い「学術研究・専門・技術サービス業」に就く人が最多となっています。
<理学系研究科>
理学研究科は、半数近くとなる約45.1%の人が博士課程まで進み、残りは修士課程修了後に製造業を筆頭とする民間企業に就職しています。一方、博士課程の修了者・満期退学者も多くは一般企業に就職しますが、業種別に最も多いのは「教育・学習支援業」で次いで「学術研究・専門・技術サービス業」となっており、より専門的な仕事に就く人が多い傾向です。
このように、東大理科一類への進学者は、その多くが大学院まで進み、その後は民間企業などに就職しています。しかし、就職先には工学系や理学系の専門知識を活かせるところを選んでいることがうかがえるでしょう。
東大理科一類は幅広い教養と専門的な学問の基礎を学ぶ場所
東大一の学生数を誇る東大理科一類では、1~2年次で幅広い教養を身につけるリベラルアーツや、3年次に進学する学部学科で学ぶうえで必要な基礎知識を身につけます。3年次以降の主な進学先は工学部や理学部ですが、そこから大学院に進んでより専門的な学問を究める学生が大半です。
また、卒業後は製造業や研究機関などの民間企業に就職し、多くの卒業生が社会の第一線で活躍しています。そんな東大理科一類には、入るだけでも大変ですが、合格すれば極めて質の高い学問を学ぶことができ、卒業後は学んだことを活かせる道に進むことが期待できるでしょう。