大学受験の最高峰「東大医学部」の実態

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大学受験には本来、勝ち負けはありません。行きたい大学に行き、学ぶべきことを学んで卒業し、より高い次元で社会に貢献できる力を得ることが大学に行く目的だからです。しかし、受験の世界には偏差値という「数値による評価」があるので、どうしても競争意識が刺激され、偏差値の数値が高い有名大学を目指したくなります。また、行きたい大学や学びたいことを教えてくれる大学は、得てして偏差値が高いものです。そうした理由から、やはり受験には勝ち負けといった要素が含まれてしまうのです。

国内で最も偏差値が高い大学学部は、東京大学の医学部です。受験の最高峰の東大と最難関学部の医学部をドッキングした東大医学部に合格した人は大学受験の絶対勝者といえるでしょう。しかし、東大医学部のことは意外に知られていません。その実態の一部を紹介します。

医学部と理3の関係

「東大医学部は東大理3」という考えはほぼ正しいといえますが、100%正解とは言えません。
東大は学部ごとの入試を行っていません。東大受験生は文科1、2、3類、理科1、2、3類の6類から1つを選んで受験しますが、合格してもすぐに専門の学部で履修するわけではありません。

東大1年生は全員、駒場(東京都目黒区)の教養学部に入ります。未来の医師も未来の弁護士も未来のノーベル賞受賞者も、すべて教養学部からスタートします。

東大医学部に入ることができるのは110人です。理3の定員は100人で、そのうち97人が医学部に移行できます。そして理2からも10人が医学部に入ることができます。そして、これがとてもユニークな仕組みなのですが、すべての類から3人が医学部に入ることができます。例えば、文1から医学部に入ることも可能です。

教養学部から医学部を希望する場合は選考が行われます。選考は教養学部での成績次第となっています。類から学部に移行することを、東大用語で「進振り(しんふり、進学振分け)」といいます。つまり東大の1、2年生は、単に単位を取得して進級すればよいわけではなく、進振りに振り落とされない成績を修めなければならないのです。それは医学部を目指す理3生でも同じです。

これも東大医学部の実態のひとつです。理3の1年生たちは、その年の日本の大学受験で最も優秀な成績を修めた人たちですが、その彼ら彼女らは大学に入って一息つけるどころか、今度は天才・秀才が集まった理3のなかでさらに成績を競わなければならないのです。

リベラルアーツ教育

ではなぜ東大は、文系学生も理系学生も最初は教養学部で学ばせるのでしょうか。他の総合大学では、法学部生は1年から法律を学び、医学部生は1年から医療を学びます。しかし、東大は「リベラルアーツ教育」を推進しているからです。

東大入試とはいえ大学入試ですので、その出題範囲は「高校で習うこと」に限定されます。したがって、4月の東大1年生は、限られた知識しか有していません。しかも、彼ら彼女らは、高校の教師や予備校の講師たちが教えることを「正しいこと」として学んできました。
しかし、東大が求める学生とは、固定観念や先入観から解き放たれ、他者の主張を批判的にとらえ、自由な発想で社会科学、人文科学、自然科学を探求していく人です。

東大は、1年生に専門分野の知識を詰め込むのではなく、文字通り「教養」を積ませます。これがリベラルアーツ教育の考え方です。

理3生は教養学部で、生物学、化学、物理学を中心に学びますが、歴史、語学、教育学、心理学も学びます。理3生にも、人間についての探求心を養うことや、生命と社会の関りを学ぶことが求められます。

医学科と健康総合科学科がある

2年生の秋に晴れて東大医学部に進級した学生たちは、医学科と健康総合科学科にわかれます。

医学科

東大医学部医学科は、医師を養成します。医学科の学生たちは6年制のカリキュラムを終えると医師国家試験に挑み、それに合格すると医師になります。医師は大きく臨床医と研究医にわかれますが、東大医学部医学科は「研究医を養成することが大きな目標(※1)」と強調されています。
(参照(※1):東京大学大学院医学系研究科・医学部「高校生の皆さんへ」

臨床医とは、病院やクリニックなど、外来患者や入院患者の治療にあたるいわゆる「お医者さん」です。一方の研究医は基礎研究を積み重ね基礎医学を追求します。基礎医学には、がんや免疫、アレルギー、脳などの研究が含まれます。未知の領域に突き進むのが基礎医学といえるでしょう。また、医療倫理学や統計学、医療経済などを研究する社会医学も研究医たちのフィールドになります。

もちろん、東大医学部医学科でも臨床医を養成します。ただその場合でも、発見が難しいとされている病気の診断方法を確立したり、治療が難しい病気の治療法を構築したりと、やはり最新の医療を追求します。医学科こそ、「ザ・東大医学部」なので、後段でさらに詳しくみていきます。

健康総合科学科

医学部健康総合科学科には「環境生命科学」「公共健康科学」「看護科学」の3つのコース(専修)があります。
健康総合科学科を卒業しても、医師国家資格の受験資格は得られません。健康総合科学科で取得可能な資格としては看護師資格があり、看護科学専修に進んだ人は国家試験の受験資格が得られます(※2)。
(参照(※2):東京大学 医学部 健康総合科学科「進学情報」

環境生命科学専修では、「人間の生物学」を学びます。一般的に生物学といえば、植物や動物を扱いますし、人間を生き物として研究するのは医学であり、ある種珍しい学問といえるでしょう。

では、人間の生物学では何を扱うのかというと、人間という固体を構成する臓器や細胞や分子を探求する生命科学や人間と生態系の関係を探る環境学となります。人間と他の動物とは、分子レベルでも集団レベルでも異なる部分が多くあります。環境生命科学専修ではその違いを研究することで、健康分野だけでなく健康以外の分野の発展にも貢献していきます。
環境生命科学専修を卒業する人たちは、生命科学や人間生物学の研究者や教育者になります。また、ビジネスパーソンになる人は、製薬メーカーや食品メーカー、バイオや環境関連の企業に就職します。その他、国や自治体の行政機関(公務員)やシンクタンク、マスコミなどに就職する人もいます。

公共健康科学専修では、社会や環境から人の健康の課題を抽出し、健康というものを計量的、質的にとらえることで、疫病予防や治療、健康増進に寄与する研究に携わります。医師たちとは異なるアプローチで生命を研究するわけです。 具体的な研究テーマには、次のようなものがあります。
・医学研究のデザイン
・データ分析の方法論の構築
・治療や予防の効果の検証方法の確立
・疫病の社会的負担の分析
・保健医療政策の分析
・健康の社会的要因の測定

卒業後の進路は、健康総合科学科と似ていて、公務員、マスコミ、シンクタンク、教育機関、医療系企業などとなっています。

看護科学専修は、看護学を追求し看護師を養成するという点では、他の4年制大学の看護学科と同じですが、「社会環境との関連で科学的に実践する」「生命科学実習」「健康科学調査」「国際保健の現場でのマネジメント養成」といった東大ならではの学びがあります。

そして看護科学専修を卒業し、看護師免許を取得した東大卒看護師には、グルーバル化を促進して日本の優れた看護学を世界に発信する使命が課せられます。卒業生は一般の病院に看護師として勤めることもありますが、その他にも、マネジメント能力を活かした看護管理者や世界保健機関の職員などへの道があります。

医学科の実態

「ザ・東大医学部」である医学科の学生たちの卒業後の進路などをみていくことで、東大医学部の実態にさらに迫っていきましょう。

東大医学部卒の医者はどのような医者なのか

東大医学部医学科は6年制で、ここを卒業することによって医師国家試験の受験資格を得ることができます。臨床医になるには、医師国家試験に合格して医師免許を取得してからさらに2年間、大学病院や自治体病院などで卒後臨床研修を受けなければなりません。卒後臨床研修では、内科、救急、地域医療が必修で、そのほかに外科、小児科、産婦人科、精神科、麻酔科が選択必修になっています。

ここまでの流れは、他大学の医学部でも同じです。つまり法律的には、東大医学部医学科卒の医師も、他大学医学部卒の医師も同じです。

では、東大医学部医学科は、他大学の医学部と何が違うのかというと、基礎医学を重視していることです。他大学の医学部のなかには、まずは患者に接触させ、病気について肌感覚で学ばせてから基礎医学に取り組むという流れのカリキュラムを組んでいるところもあります。しかし、東大医学部医学科では、教養学部から医学部に進級してすぐに基礎医学を学ばせます。

それは医学科の教授たちに、東大医学部卒の医師は「医学の進歩を自ら追いつつ、学問を背景とした医療従事者にならなければならない」との想いがあるからです(※3)。
(参照(※3):東京大学大学院医学系研究科・医学部「基礎医学・社会医学系について」

基礎医学には、解剖学、生理学、生化学、人類遺伝学、放射線基礎医学、微生物学、薬理学、病理学、免疫学といった領域があります。

基礎医学のトレーニングを受けた後は、基礎医学と臨床医学のつながりを学んだり、「人間のための医学」に関する講義を受けたりします。そのうちのひとつに社会医学があります。社会医学はさらに、衛生学、法医学、公衆衛生学、統計学、医療情報学などに専門分化します。

医学科4年生からは臨床医学と実習が始まります。臨床医学には、内科、小児科、精神科、外科、脳神経外科、形成外科、小児外科、整形外科、産科、婦人科、眼科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、皮膚科、麻酔科、放射線科、口腔外科、救急、リハビリテーション、臨床検査、医療情報、輸血、感染制御などがあり、これらすべてを学びます。

臨床医になれば、このなかから1つの科または複数科を選んで専門性を高めていきますが、医学部医学科は、この臨床医学すべてが必修科目になっています。それは、人間の病気を扱うには、人体のあらゆる部位の構造、機能、病態を知らなければならないからです。人間を1つの有機体としてみなければ治療はできず、1つの有機体としてみるには、これだけの勉強をしていかなければならない、というのが東大医学部医学科の考えです。

実習は4年生から始まります。最初の半年間は臨床診断学実習を行い、医療面接、視診、打診、聴診、神経診察などを学びます。医療面接は、「本物の患者さん」ではなく模擬患者に対して行います。

そして、5年生から、6~7人のグループにわかれて各診療科で実習します。「本物の入院患者さん」を受け持ったり、診察や診断、外科手術の現場に入ったりすることになります。こうした実習は世界最高峰の医療を提供している東大医学部附属病院で行います。つまり、東大医学部医学科生たちは、学生のうちから世界で最も進んだ医療に接することができるのです。

ノーベル賞を取るために東大医学部に入った人の「道」とは

東大医学部を目指す受験生のなかには、真剣にノーベル賞を目指している人もいるでしょう。そのような人は東大医学部医学科を卒業したら、医師免許取得後、大学院に進学し基礎医学研究に従事することになります。

基礎医学に進む人のなかには、2年の卒後臨床研修を受けてから基礎医学に戻る人もいます。それは基礎医学の研究は「当たるか当たらないかわからない」からです。もし研究が行き詰まり途中で基礎医学をあきらめた場合に臨床医の道に進むためにも、念のため卒後臨床研修を受けておくわけです。この研修を受けておけば、いつでも病院の勤務医(臨床医)として働くことができます。

しかし、本気でノーベル賞を目指す人は、卒後臨床研修を受けずに研究に邁進することになるでしょう。医学科の学生のうち基礎医学に進むのは1割ほどで、しかもその数は減少傾向にあります。医学部医学科はホームページで、「能力ある人材の参画を非常に歓迎している」と基礎医学に進むことを強くPRしています。

まとめ

東大医学部には2つの大きな壁があります。1つは入学の壁で、これを乗り越えるには特化した受験勉強が必要です。予備校の力を借りてしっかり準備していきましょう。東大医学部を目指す人は、遅くとも高校1年生から勉強の準備に取り掛からなければなりません。理想は中学生から東大医学部向けの受験勉強に着手することです。

そして、東大医学部の2つ目の壁は、入学後の高度かつ膨大な量の勉強です。通常の頭脳では乗り越えることができないでしょう。東大医学部を狙う受験生や東大医学部生にここまで学ばせるのは、東大医学部の教授たちが、日本の医療や世界の医療を背負って立つ人材をつくろうとしているからです。つまり東大医学部の実態とは「世界最高の医療人養成所」ということになるのです。

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