東大に受かるには「東大までの道のり」を知る必要がある。勉強方法・時間を解説
多くの受験生にとって憧れの東京大学。
この大学に入るために、小学生のころから10年以上かけて準備する子供や親も少なくありません。日本人の平均寿命は大体80歳なので、そのような人たちは人生の約8分の1を東大入学に捧げていることになります。
「そこまでして東大に入る意味があるの?」と思う人もいるかもしれません。
ただ、結論からすると「東大に入ることには大きな意味がある」と言えます。
東大を出ると最新の研究に携わることができたり、日本の方向性を決める重要な仕事に従事できたりするからです。だからこそ、東大に入ることは簡単ではありません。
しかし、難しいからといって東大入学をあきらめる必要はありません。東大合格者は「選ばれた人」と言われますが、正しくは「入試問題を解けた人」に他ならないからです。
東大は、高卒見込み者と高卒者・およびそれと同等の人のすべてに、入試を受けるチャンスを提供しています。つまり、やるべきことを積み重ねていけば、必ず東大合格にたどり着けるということです。
東大に入りたいと考えている人は、闇雲に勉強を始める前に「東大までの道のり」をしっかりと確認しておきましょう。
東大の教授たちに求められる人材とは?
大学の教授たちは「うちの大学にはこういう学生に来てほしい」と考えながら、入試問題をつくります。
そして、東大の教授は「考える人」を欲しがっています。なぜなら、そういう人でないと世界に通用する研究者や、日本を引っ張るリーダー・世界で活躍できるビジネスパーソンになれないからです。
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授の上田正仁氏は、東大入試の特徴について「必要な知識量を減らしながらも、深く応用することで答えられる問い」と述べています。(※1)さらに、東大入試に必要な知識量は「基本的に教科書に書いてあることがすべて」とも断言しています。
教科書に書かれてあることがすべてなら、なぜ東大入試は最難関なのでしょうか。その答えも上田教授は教えてくれています。
東大入試の問題を解くには、高度な思考力と判断力が必要なのです。高度な思考力と判断力とは、目の前の事実を深く理解する洞察力であり、事実の背後にある法則を見抜く力のことです。
(※1)参照:東大新聞オンライン『【受験生応援2018】東大教授が語る2次試験の意味 「知識ではなく考える力を試す」』
東大入試の合格率はどれくらい?
ここでは、東大入試の合格率を見ていきましょう。大学受験の合格率を表す倍率には「志願倍率」と「実質倍率」の2つがありますが、今回は「受験者数」÷「合格者数」で計算した実質倍率を採用します。
以下の表では、東京大学が毎年公表している「入学者数・志願者数」のデータを基に、令和5年の東大入試における実質倍率を算出してまとめました。
科類 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率(実質倍率) |
文科一類 | 1,188人 | 406人 | 2.92倍 |
文科二類 | 1,044人 | 358人 | 2.91倍 |
文科三類 | 1,392人 | 471人 | 2.95倍 |
理科一類 | 2,730人 | 1,118人 | 2.44倍 |
理科二類 | 1,845人 | 547人 | 3.37倍 |
理科三類 | 288人 | 97人 | 2.96倍 |
合計 | 8,667人 | 3,085人 | 2.80倍 |
令和5年における東大入試の実質倍率は全体で約2.80倍です。一般的な大学受験の実質倍率の平均は3.0倍以上と言われており、東大入試に合格する難易度はやはり高いことが分かります。
東大の入試問題自体の難易度はそれほど高くはない
東大合格者の多くは、「東大入試は難解ではない。ただ、考える力が必要になる」と言います。「考える力」については後で詳しく解説するので、ここでは「難解ではない」という点について考えていきます。
このような話を聞くと、「東大に受かるような人だから、東大の入試問題を難しくないと感じるのだろう」と疑いたくなるかもしれません。しかし、決してそうではなく、東大の入試問題は本当に難しくないのです。
理由①国語問題は文章の一部の意味を尋ねるだけ
例えば、2016年度の東大文系の国語問題に、以下のような設問がありました。(※2)
「この人はあらゆることについて正解をすでに知っている」(傍線部イ)とはどういうことか、説明せよ。 |
答えは記述式なので、選択方式よりは確かに難しいのですが、設問自体は難しいことを尋ねているわけではなく、文章の一部の意味を聞いているだけです。しかも、対象となっている文章は「この人はあらゆることについて正解をすでに知っている」だけで、難解な単語は一つも使われていません。
この問題は、「反知性主義」について書かれた文章を読み設問に答えさせています。「傍線部イ」の前後の文章を引用してみましょう。
反知性主義者たちはしばしば恐ろしいほどに物知りである。一つのトピックについて、手持ちの合切袋(がっさいぶくろ)から、自説を基礎づけるデータやエビデンスや統計数値をいくらでも取り出すことができる。けれども、それをいくら聴かされても、私たちの気持ちはあまり晴れることがないし、解放感を覚えることもない。というのは、(イ)この人はあらゆることについて正解をすでに知っているからである。正解をすでに知っている以上、彼らはことの理非の判断を私に委ねる気がない。 |
確かに「反知性主義」や「合切袋」「自説」「エビデンス」「理非」といった、普段聞かない単語が出てきますが、それらの意味がわからなくても、著者が反知性主義者を批判的に見ていることはわかります。
そしてこの部分は、次のように要約できます。
●私は、反知性主義者から説を聞いても解放感を覚えない。彼らは正解を知っていて(なおかつ、それに自信を持っているから)、私の判断に関心を示さないからだ。
ここまで理解できれば、後は本文を深く読み、言葉を足していくだけです。
(※2)参照:東京大学『入試試験問題 国語(文科)』
理由②出題される「漢字」の難易度も低い
同じ年の国語の問題には、次のような漢字を書かせる設問が出題されています。
傍線a、b、cのカタカナに相当する漢字を楷書で書け。 aチンプ |
いずれの設問も、決して難しい漢字ではありません。
東大の入試問題といえども「高校生が解ける」ことを前提にしている
もちろん、東大の入試問題のすべてがこれほど易しいわけではなく、なかには数%の受験生にしか解けない問題もあります。
しかし、東大に合格する方の割合は34%ほどと言われています。つまり、東大合格者のすべてが回答率数%の難問を解いているわけではないということです。 言い換えると、合格最低点さえ取れれば、出題された問題のうちどれを解いても問題ありません。
東大の入試問題といえども解けるようにできていますし、高校生や浪人生たちに解かせようとして作られています。 普通高校の授業を3年間しっかり受けている人ならば、特別な東大入試対策を受けていなくても、東大入試の過去問を解いて「0点」になることはないでしょう。
もちろんそれだけでは東大合格はできませんが、「解けないわけではない」ことがわかれば、自分に東大の受検資格があることをリアルに理解できるはずです。
そして、その解ける問題を増やしていけば、合格への道も見えてくるでしょう。
東大に受かるにはどれくらい勉強すれば良い?合格に必要な勉強時間の目安
東大に受かるためには、一般的に約3,500時間~4,000時間、多い方だと5,000時間以上の勉強時間の確保が必要だと言われています。
もちろん、全ての方に当てはまる訳ではありません。スタート時点での学力や勉強の質、理解するスピードなど、さまざまな要因によって必要な勉強時間は大きく異なります。上記に記載した勉強時間は、あくまで目安として参考にしましょう。
重要なのは、東大に合格するためには多くの勉強時間が必要となる点を認識することです。
そうすることで、早めの段階から受験勉強に取り組む必要性に気付くことができ、自分にとって必要な勉強時間を確保できます。
東大に受かるには早めの受験対策が重要!意識すべきことを学年別に解説
東大に受かるためには膨大な勉強時間が必要であり、早めの受験対策が重要です。
ここでは、中学生〜高校三年生までの勉強期間を学年別に分けて、東大に受かるために意識すべきことを解説します。
東大に受かるために中学生のうちに意識すべきこと
HUSTAR株式会社が実施した「現役東大生の中学時代の1日の勉強時間」に関する調査では、現役東大生の34%が中学生時代の勉強時間について「1日2時間~3時間」と回答しています。
また、「1日3時間以上」と回答した方の割合は18%でした。つまり、調査対象に選ばれた現役東大生の半数以上が、中学生の頃から毎日2時間以上勉強していたことが分かります。これに対し、一般的な中学生の1日の平均勉強時間は1時間〜2.5時間程度です。上述した東大生の勉強時間と見比べると、それほど大きな違いは無いように思えます。
しかし、上記はあくまで学校以外での自主学習の時間です。東大合格を目指す方の中には難関大学への進学を見据え「中高一貫校」へ進学した方も多く、学校教育の進捗において既に差が開いているケースも少なくありません。
そのため、中学生のうちは勉強時間ばかりに目を向けるのではなく、学習の進捗状況を意識することが重要です。例えば自分が通う中学のカリキュラムが中高一貫校に遅れをとっているようであれば、自主学習の時間を長めに確保する努力が必要となります。
参考:PR TIMES 東大生って中学時代どのくらい勉強してた?現役東大生に中学時代の勉強時間を徹底調査しました!
東大に受かるために高校一年生が意識すべきこと
高校一年生は大学受験における「基礎固め」の時期です。特に東大の受験では、基礎的な問題でどれだけ点数を稼げるかが合否の分かれ道となります。学校から与えられた日々の課題を着実にこなしながら、授業の予習・復習をしっかり行うことで、簡単な問題を取りこぼさないための「基礎力」を身に着けましょう。
また、高校一年生の時期は勉強習慣の定着を意識することも重要です。学校以外の自宅学習では、平日なら1日2時間〜3時間程度・休日は1日4時間〜5時間程度の勉強時間を確保してください。早い時期から毎日コツコツ勉強することに慣れておけば、長い受験勉強を戦い抜くための体力も身につきます。
東大に受かるために高校二年生が意識すべきこと
高校二年生が受験勉強において意識すべきは、高校一年生と同様に「基礎固め」です。この時期に焦らず着実に実力をつけていくことで、東大合格への道が拓かれます。
高校二年生になったら、英語と数学を特に優先して勉強しましょう。この2つは他の科目と比べて、必要な勉強量が圧倒的に多い科目です。暗記科目と違って単語だけ覚えても得点は稼げないので、早い段階で勉強に取り組み基礎を身に着けておく必要があります。余裕が出てきたら、古文・漢文や社会科目などの暗記科目にも取り組みましょう。
また、東大に合格するために必要な勉強時間は、高校二年生の場合1日5時間〜6時間が目安です。もちろん、学習の進捗状態によっても異なり、勉強を始める時期が遅ければその分多くの勉強時間が必要となります。
東大に受かるために高校三年生が意識すべきこと
高校三年生になったら、勉強のペースを一気に加速させましょう。これまでの受験勉強で身に着けた基礎力を土台とし、各教科の総合力を一気にアップさせていきます。秋ごろまでには全ての学習範囲を網羅し、終盤はひたすら過去問や既習分野の復習に時間を充てるのが理想です。
東大に合格するためには、高校三年生で1日10時間〜12時間の勉強が必要と言われています。東大受験者としての自覚を持ち、全てを勉強に捧げる覚悟がなければ、高校三年生といえども毎日これだけの勉強時間を確保することは困難です。
これまでの努力を信じ、最後まで後悔のないよう全力で走り切りましょう。
東大に受かるには「できる」という確信が欠かせない
難しいことや大きなことを成し遂げるには、何が必要でしょうか。確かな方法でしょうか、努力でしょうか、明晰な頭脳でしょうか。
もちろんそれらは必要ですが、いずれも2番目、3番目のものであって、1番目に必要なものではありません。
東大合格という難しくて大きな偉業を成し遂げるには、「できる」という確信を持つ必要があります。
東大合格に向けて勉強を始める前に
東大合格を目指す人は、最初に「できる」ことを確認しておきましょう。
前期日程で東大文類に入学するには、センター試験8科目と2次試験4教科の試験を受ける必要があります。東大理類はセンター試験7科目と2次試験4教科です。つまり、東大を目指す受験生は、12~13科目の勉強を「するだけ」で東大に合格できます。
まずは「1年間1科目だけ勉強すれば東大レベルに到達できる」と確信することが重要です。1科目だけを集中して1年間学べるのであれば、全国模試でもトップレベルに到達できるでしょう。
もし高校三年生がそう確信できたら、次に考えるべきは勉強のスピードアップです。 1年間1科目のペースでクリアしていくと、12〜13科目クリアするのに12〜13年かかります。したがって、高校三年生は勉強スピードを12〜13倍にすれば1年で東大に合格できることになります。つまり、東大合格には勉強の効率化が欠かせないということです。
東大合格に向けた勉強方法1.常に効率を考える
東大合格者は、驚くほどさまざまな勉強効率法を考えています。
例えば、ある東大合格者は、英単語を覚えるときに紙に書かず、指で空中に書いて覚えました。紙に書くと時間がかかるからです。しかも、空中書きに慣れることができれば、電車のなかでもトイレのなかでも実行できます。
別の東大合格者は、自室に黒板を設置し、どうしても覚えられない英単語をそこに大きく書きました。ノートに英単語を書くと、ページをめくった途端にみえなくなってしまいますが、自室の黒板に書いておけば、歴史の勉強をしているときなどでもそれを「チラ見」することができます。
もちろん黒板には、日本史の内容や数学の公式を書いてもいいわけです。
効率化を考えることは東大受験では欠かせず、逆に言うと、効率化を考えずにただ参考書と問題集を追う勉強法は東大受験には向きません。
「効率化を追求しすぎると、実際の勉強時間が減るのではないか」と感じるかもしれませんが、そうではありません。効率化の追求こそ、最も効果が高い実践的な勉強だからです。
効率化が必要なのは、自分が難解に感じる領域です。つまり、効率化を考える行為は、難解な問題を真剣に考える行為そのものなのです。
「なぜこの問題が解けないのだろうか」
↓
「記憶法が悪いのだろうか、学習方法が悪いのだろうか、よい解説に巡りあっていないからだろうか」
↓
「記憶法を変えよう、学習方法を変えよう、よい解説を探そう」
この工程こそが効率化の検討になります。これこそ実践的な勉強といえるでしょう。
東大合格に向けた勉強方法2.無駄を徹底的に省く
勉強を効率化させるもうひとつの方法は、無駄の回避です。東大には必ずしもトップで入る必要はありません。ビリで入っても東大合格は東大合格です。予備校の模試でなかなか東大合格圏に入れない人は、最低合格ラインをクリアすることだけを考えましょう。
例えば、ある科目の学習が合格最低ラインに達すると確信できたら、別の科目の勉強に取り掛かるのが効率的です。しかしそれをするためには、科目ごとの東大合格最低ラインを把握しておかなくてはなりません。
つまり、勉強を効率化させるには、どの科目にどれだけの学力が必要なのか、分析しておく必要があるということです。
東大合格に向けた受験勉強のモチベーションを維持するコツ
東大を目指す受験勉強は過酷になるでしょう。なぜなら、東大の入試問題は考える力を問うからです。記憶力勝負の入試なら覚えればよいだけですが、東大入試を克服するには考えに考え抜かなければなりません。
過酷さに立ち向かうため、東大受験生は「東大に入りたい気持ち」を強く持ちましょう。モチベーションは何でも構いません。
官僚になりたい・日本のリーダーになりたい・国を動かしたい・莫大な予算で研究がしたい・ノーベル賞を取りたい・癌を治す薬を開発したい・大企業を引っ張りたい・お金持ちになりたい…。ただ、こうしたモチベーションは強くなければなりません。1日も早く「惜しみない努力をしてでもそれが得られるのでれば惜しくないもの」を見つけましょう。
東大受験のライバルは「普通の努力家」だ
東大合格者のなかには、本当の天才がいます。そのような人は、1を学んだだけで30を理解することができます。
しかし、そのような人は一握りしかいません。そのため、彼らはあなたにとってのライバルにはなりません。
「あなた」のライバルは、「普通の頭脳だけど努力を惜しまない人」です。決して、「自分は普通の頭脳しか持っていない」と悲観する必要はありません。
勉強の効率化を入試の前日まで続ける努力ができる人が、栄冠をつかむのです。
まとめ~東大受験には「予備校」という伴走者がいる
東大の入試問題は「超絶難しい」わけではなく「普通に難しい」問題がたくさん出ているだけです。「普通に難しい」問題なら、一流と呼ばれる大学であればどこでも出題されます。つまり、東大に受かるには「普通に難しい」問題を多く解けるようになればよいということです。
そのためには、上田教授が指摘する「目の前の事実を深く理解する洞察力」「事実の背後にある法則を見抜く力」が欠かせません。これらの能力を身につける方法を教えてくれる人は、世の中にあまりいませんが、予備校には洞察力と法則を見抜く力を教えてくれる人がいます。予備校の講師は、東大受験の伴走者ともいえる存在なのです。
以下のページでは、大学受験にイチオシの予備校を点数方式でわかりやすく紹介しています。東大合格に向けて最良の伴走者を見つけたい方は、ぜひ一度チェックしてみてください。