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東大理学部では「これ」を学ぶことができます

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東京大学理学部を目指している受験生に、ここで何を学ぶことができるのかを紹介します。
受験生であっても、理学部で何を学ぶことができるのか、知らない人もいるでしょう。同じ理系学部でも、医学部では手術や薬で病気を治す方法を学ぶ、工学部では機械や建物や土木を研究する、とイメージできます。

しかし、理学部については、「これを研究している」と明確に説明するのは簡単ではありません。なぜなら理学部では、わかっていないことを突き止めようとしているからです。

なぜ異常気象が起きるのか、なぜ生物は生きたあとに死ぬのか、宇宙はどうなっているのか。世の中にはわからないことがたくさんあり、理学部の学生や院生、教授たちはそれを解明しようとしています。

そして、東大理学部は、謎になっていることすら一握りの人しか知らない究極の謎を解き明かそうとしています。この世がどうなっているのかを知りたい受験生は、東大理学部に入ればそれが少しわかるようになるかもしれません。

東大理学部の神髄とは

21世紀の人類は、それまでの人類と比較してさまざまなことを知ることができるようになりました。しかし、それでもまだわからないことのほうが断然多いと言わざるを得ません。わかっていないことにすら気がついていないこともまだまだたくさんあります。理学部はわからないことをひとつずつ解明していく学問です。

工学部や医学部とはまったく異なるアプローチをする

世界一高いビルディングを建てたい、健康に長生きしたいという欲求(ウォンツ)や必要(ニーズ)があって、それを実現するために研究をする工学部や医学部とはまったく違うアプローチをします。

東大理学系研究科・理学部(以下、東大理学部)の武田洋幸研究科長(発生遺伝学、教授)は、物質を構成する素粒子から、細胞や生物個体、地球規模の生態系、そして宇宙まで、あらゆる自然現象を研究対象とする、と説明しています(肩書は2019年8月現在のもの、以下同)。

謙虚に自然に向き合う

では、東大理学部は社会のウォンツやニーズにまったく無関心でよいかというともちろんそのようなことはありません。科学技術に応用できるシーズ(種)を生み出すことが、理学の研究になります。

武田研究科長は、2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故を、人類の慢心と驕りに対する自然からの警鐘であるととらえています。そこで理学が、「観測と観察と実験を通じて自然に向き合い、自然に耳を傾け、自然に語り掛ける必要がある」と説きます。そのためには謙虚な姿勢が必要です。

国内最高峰の理学部を目指す受験生には探求心が求められます。

ノーベル賞について

東大理学部はノーベル賞受賞者を数多く輩出しています。半導体物理学の江崎玲於奈氏は1973年にノーベル物理学賞を受賞しました。小柴昌俊氏は17万光年のかなたの星から発せられたニュートリノという物質を観測して、2002年にやはりノーベル物理学賞を受賞しました。

2008年のノーベル物理学賞受賞者は南部陽一郎氏で、「対称性の自発的破れ」の概念を生み出しました。この概念は素粒子物理学と原子核物理学の基礎になっています。新しい学問を生み出したわけです。

梶田隆章氏は小柴氏の下でニュートリノ研究をしていて、ニュートリノに質量があることを突き止め、2015年にノーベル物理学賞を受賞しています。師弟でノーベル賞を獲ってしまったのです。

「ノーベル賞を獲るために東大理学部に入る」という夢は、十分実現可能な目標です。

5つの専攻と10の学科で構成

東大理学部には5つの専攻と10の学科があります。学生たちが何を学んでいるのか、さらに細かくみていきましょう。

物理学専攻

物理学専攻では「素粒子から光、物性、宇宙まで、あらゆる分野を網羅する、世界でも最大規模の物理学の研究教育拠点」とあります。物理学とは、一見複雑に見える自然現象の本質を解き明かし、普遍的な法則や概念にまとめる学問です(山本智物理学科長)。

物理学専攻を卒業した学生の多くは、さらに大学院に進んで研究を続ける人と、企業や公務員になる人にわかれます。就職先企業には、電気、精密、機械などのメーカーやIT企業、金融機関やシンクタンクなどがあります。

天文学専攻

天文学専攻は宇宙を研究しています。宇宙は人類が最も知りたがっている謎であり、人類と自然の起源でもあります。天文学専攻の学生たちは、宇宙はどのように誕生し、なぜ今の姿になり、今後どのような未来を迎えるのかを解き明かしていきます。

天文学専攻の学生のほぼ全員が大学院に進学します。
過去の就職先企業には、ニコン、ソニー、小松製作所、みずほフィナンシャル・グループ、三菱東京銀行、本田技研工業、警視庁、博報堂などがあります。

地球惑星科学専攻

地球惑星科学専攻は2019年8月に、1億年前につくられた海底下深部の溶岩から生命生存可能性を示す鉱物を発見した、と発表しました。これで火星に生命が生存する可能性がどれくらいあるかがわかります。

それは、1億年前につくられた海底下深部と火星の様子が似ているからです。海底下深部に生命が存在する可能性を示す鉱物があったということは、火星に生命が存在してもおかしくない、というわけです。

化学専攻

化学専攻は自然の理(ことわり)を化学の視点で明らかにしていきます。具体的には、未知の物性を探したり、原子・分子レベルから新規の化合物を設計して新たな材料を開発したり、地球や惑星のあらゆる物質を分析したりします。

生物科学専攻

生物科学専攻では、体内時計のリズムを生み出しているゲノム配列をみつけたり、花を咲かせる「スイッチ」が押される瞬間をとらえたり、シロアリの顎(あご)を伸ばす遺伝子を突き止めたり、細胞壁がつくられる仕組みを発見したりします。

卒業者が大学の研究者になったり、公務員になったりします。過去の就職先企業には、アサヒビール、カルビー、住友化学、第一三共、NTT東日本、DeNA、エイベックスなどがあります。

数学科

ザ・理学部のひとつが数学科ではないでしょうか。
数学科では、さまざまな事象の背後にひそむ数理的構造を探求します(河野俊丈・数理科学研究科長)。具体的な研究領域は代数、幾何、解析、応用数理です。例えば、代数では、数論を研究します。数論とは「1、2、3といった素朴な数の多彩で美しい広がりを持つ世界」であると、数学科では説明しています。

情報科学科

東大理学部の情報科学科は、普通の情報科学を扱いません。東大理学部の情報科学科は公式サイトで「情報と名のつく学科は数多く存在するが、そのほとんどは計算機を道具として利用するだけのものである」とかなり強気の姿勢を示しています(*)。

*:http://www.is.s.u-tokyo.ac.jp/about/outline.html

では東大理学部の情報科学科は何を研究しているのかというと、新しい動作原理で動く計算機の開発と、その新しい計算機の新しい使い方です。最近流行りのAI(人工知能)も研究対象にしています。ITやプログラミングの「本場」といったイメージです。

物理学科

物理学科も数学科と並んでザ・理学部といえます。関連施設を多く抱える学科でもあります。そのひとつである原子核化学研究センターは、世界最高の高エネルギー加速器を保有し、小さな粒である素粒子を「見よう」としています。

この研究がユニークなのは、同センターのトップである東京大学素粒子物理国際研究センター長、浅井祥仁氏自身が「5年や10年の短期間で、すぐに社会に役立つ何かをもたらすことはできない」と断言しているところです(*)。

*:https://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/about/message.html

では何のための研究かというと「自分を取り巻く世界を知りたいという人間の知的欲求を満たすため」です。そして浅井氏は「その価値をどうかご理解いただきたい」とまで述べています。

ではこの研究成果はいつ実を結ぶのでしょうか。これにも浅井氏は真摯にかつ正直に次のように回答しています。

「サイエンス百年の計」と。

100年先を見据えた研究に携わりたい受験生には、東大理学部で物理を学ぶことをおすすめします。

天文学科

天文学科は宇宙の謎を解明しようとしています。この学科はロマンを感じるほど壮大です。それは講義の名称を聞くだけでわかります。

「最新の宇宙像」「銀河天文学」「天体観測学」「太陽恒星物理学」「計算天文学」「位置天文学・天体力」「恒星進化論」「宇宙論」「星間物理学」「系外惑星」「重力波物理学」

SF映画に出てくるような単語が並びます。これを大学生が学ぶのです。天文学科の研究材料も大規模です。例えば、衛星「あかり」が観測する赤外線撮像データを使い、銀河が衝突によって流出したガスの成分を検出しています。そして、このあかり観測は、フランスとの二国間共同研究になっていますまた、すばる望遠鏡を使った銀河の光の調査では、イギリス・ケンブリッジ大と共同研究しています。

地球惑星物理学科

地球惑星物理学科は、地球と惑星の現象を物理学で解明しようとしています。この研究は天気予報や緊急地震速報といった実社会に関わりが深い技術に応用できます。ただ難しい学問であるため、地球惑星物理学科は、同科を目指す学生に数学と物理の基礎、量子力学、統計力学を身につけるようアドバイスしています。地球惑星物理学科に入ってからの勉強量は、東大入試合格に必要な勉強量をはるかに上回るでしょう。

地球惑星環境学科

地球惑星環境学科は、地球の環境を、太陽系の枠組みのなかで解明しようとしています。環境問題は21世紀の人類全員の課題といっても過言ではありません。しかし、環境対策は、個別の問題に対し、個別に対処しているのが現状です。例えば、温暖化が問題になれば、温室効果ガスの削減に取り組むのは、個別問題に対する個別対応といえます。

しかし、地球惑星環境学科は、環境問題が大気、海洋、固体、生命の織り成すシステムの歪みであるととらえます。そして、地球や惑星の進化・変動と、生命の誕生・進化・絶滅との関係を突き止めようとしています。

化学科

化学科の公式サイトには、次のような一文があります。 「皆さんが物理学や生物学の研究と思っている研究が、実は最先端の化学研究の一部になっている。自然界のさまざまな現象を、分子という概念に基づいて理解しようとする、そのような自然科学はすべて化学である」(*) この文章から、化学を研究する者の誇りを感じないでしょうか。化学科の自負はまだ続きます。 「化学教室の歴史は,徳川幕府が創設した蕃書調所の精煉方(1861年)までさかのぼる。東京大学創立の年(1877年)に早くも卒業生3名を出した唯一の学科。それ以来、本教室は我が国の化学発祥の地、および先導役として学界、産業界、教育界に多くの人材を輩出してきた」(*)
化学科もザ・理学部のひとつです。

*:http://www.chem.s.u-tokyo.ac.jp/chem_undergraduate/index.html

生物化学科

生物化学科は、生物学ではなく生物化学を研究対象としています。この両者は同じく生命が引き起こす現象を観察するのですが、次の点で異なります。

・生物学:植物、動物、人類といった生命の多様性に注目する
・生物化学:生物の背景にある生命現象のメカニズムを分子・遺伝子レベルで理解する

生物化学科は学生に、この学問を究めるには生物学、物理学、化学の知識が必要であるとアドバイスしています。

理科の3科目をハイレベルで修めないと、生物化学の入口にすら到達できません。

生物学科

生物学科は生命の謎に挑みます。この学問は、人類に医学の発展や食糧危機の解決、生物の多様性の維持をもたらします。それらの難問に挑戦するため、生物学科の学生には、分子生物学、細胞生物学、生理学、生態学、ゲノム科学、数理統計学の修得が求められます。

生物情報科学科

生物情報科学科の研究対象は、遺伝子、タンパク質、DNA、ヒトゲノム情報(全遺伝子情報)、病気のメカニズム、生命の進化、などとなっています。生命現象の背後にある法則や規則性を見つけ出すことを目標にしています。

まとめ

東大理学部を説明するには「人類」「探求」「生命」「自然」「地球」「宇宙」といった単語を何度も使う必要があります。そして理学部の教授たちは学生に、物理、化学、生物、地学といった基礎的な学問の知識を強く求めています。

東大理学部(入試時は1類と2類となる)の一般入試では、理科は2科目選択すればよいだけです。しかし、仮に入試で化学と生物を選択して東大理学部に入ったとしても、必ず物理や地学の知識も求められるでしょう。東大理学部を目指す受験生にとって入試は、関門のひとつにすぎないのかもしれません。

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