大学受験の【赤本】。いつから使う?何年分必要?
大学受験を突破するために役立つのは「赤本」です。
これはいったいどのようなものなのでしょうか。
また、この赤本を使うことによるメリットや使い方にはどのようなものがあるのでしょうか。
それについて解説していきます。
赤本とはどのようなものか
歴史と成り立ち
大学受験の必携の書、とまで言われているのが「赤本」です。
(※なお、単純に「赤本」という場合、そこには「江戸時代に出された草双紙」といった意味や粗悪本、あるいは落語本などの娯楽要素の強い本を指すことがありますが、ここでいう「赤本」とは、大学受験に使う参考書・問題集のことのみを指しています)
赤本というのは、ごく簡単に言うならば、「その大学・その大学の受験で出題された過去の問題を集めた問題集」「あるいは、大学入試センター試験/センター試験(古くは大学共通第一次学力試験/共通一次)の過去の問題を集めた問題集」ということになります。
この大学受験は教学社(きょうがくしゃ)という会社が発行しています。
では、この赤本はいつから発行されていたのでしょうか。
その歴史は非常に古く、なんと60年以上前にまでさかのぼることができます。
赤本が大学受験のための問題集として登場したのは、1954年頃です。
この頃に出されていたのは「京大入試」「私立大・神大入試」「同志社・立命館入試」のわずか3つだけでした。
現在では特徴的な赤色をしているこの問題集ですが、それから10年近くの間はさまざまな色で展開されてきました。
黄色や緑、青色といった色の表紙が大学ごとに分けて付けられていたわけです。
1965年の段階からはオレンジ色になり、そしてやがて科目別に発行されるようにもなります。
やがて柿色に表紙の色が変わっていきます。
「赤本」という呼称は、読者側から発生したものだったそうです。
1986年には「赤本」という名前に相応しい赤色の表紙が撮られるようになり、1990年には今のような赤色になりました。
その後にもさまざまな変化があり、CDがついたり、AO入試(面接を重要視する試験私製)対策が盛り込まれたりと少しずつ変わって言っています。
かつてはたった3点しかなかった赤本ですが、現在では500点を超える展開にまでなっています。
現在では「大学受験を受けるならばまず赤本を」とまで言われるようになっています。
赤本の発行情報
値段は各大学によって異なりますが、2000円~3500円くらいの間です。
多くの学校でもこれを取り入れていますが、自分の受けようとしている学校の赤本は個人で所有しておきたいものです。
赤本が発行されるタイミングは、5月中頃だとされています。
ただこれも、「順次発行」ですから、大学ごとによって発行されるタイミングには違いがあります。
非常に特徴的なのは、「赤本を発行している会社には、既刊の赤本は保存されていない」ということです。
このため、最新版以外の赤本を手に入れようとするのであれば、古本屋やオークション、あるいは学校などに当たらなければなりません。
中にはマーカーなどでチェックが入っているものもありますが、この「チェック」が受験の手助けになる、として好む人もいます。
2018年1月中旬現在、最新版として発行されている赤本の内容について見ていきましょう。
「赤本には何年分の問題(解答)が含まれているか」ということはしばしば話題になりますが、現在のものは2013年もしくは2014年から2017年度までの問題は含まれているようです。
これも学校ごとによって多少の違いがみられますから、確認しておきましょう。
赤本の目的、なぜ過去問を解く必要があるのか
過去の問題を学ぶメリット
当然のことながら、赤本に含まれている大学受験の問題というのは「過去のもの」です。
これも当たり前の話ですが、「自分が受験する年の問題」がピンポイントで出題されているわけではありません。
それなのに、なぜ「赤本は大学受験の必携の書」という言われ方をするのでしょうか。
これは、赤本の特性である、「その大学で出された受験問題を、そのまま載せてある」という点にあります。
一口に「大学受験」と言っても、そこで出される問題のレベルや傾向は大きく違います。
出題形式がまったく違っていたり、好まれる問題が違っていたりします。
特に「どのような形式で出題されるか」「どのような問題傾向にあるか」には注意が必要です。
例えば英語の場合、かなりの量の英文を羅列してきてそれの和訳を求める大学もあれば、選択式を好む大学もあります。
「見たことのない問題形式」というのはあまりないかもしれませんが、「慣れていない問題形式」で出された場合、理解が追い付かず、戸惑ってしまうこともよくあります。
「慣れ」というのは受験生に落ち着きと冷静な判断力をもたらします。
その大学の出してくる試験形式にしっかり慣れておくことで、このような戸惑いを減らすことができます。
また、その大学の出題傾向を知ることで、よりその大学の攻略に適した勉強をすることが可能です。
さらに赤本は、単純に「過去の問題」が詰まっているだけの本ではない、という特徴もあります。
受験生本人で、「その大学の傾向と対策」を読みきることは難しいかもしれません。
しかし赤本には、その大学のそれまでの出題傾向を踏まえたうえで、プロがによる
「この大学はこのような出題傾向にある、このような問題を好む。
そのため、このような力を付けるとよい」
というようなアドバイスが書かれています。
苦手なところが分かる
全体的に勉強していくことももちろん非常に重要ですし、得意な分野を伸ばしていくことも意味のあることです。
けれども、大学受験においては「自分の苦手なところを知り、それの対策ができるように動けるようにすること」も非常に大切です。
特に、自分が受けようと思っている大学の受験問題やその傾向に「苦手」があるようならば、早急にそれに対してアプローチしなければなりません。
過去の問題を解くことで、その「苦手」が浮き彫りにされていくわけです。
自分で把握することが難しかった「苦手」をしっかりと知ることにより、どの分野を、どこから、どのようにして勉強していったらいいか、という計画が立てやすくなります。
これはセンター試験などに対しても有効ですが、「狙う学校の攻略」という観点から考えた場合、特に有用です。
過去の問題が解ける=その大学に絶対に合格できる、というわけではありません。
実際、センター試験などは何年間に一度は大きく出題傾向が変わります。
今までの過去問とはまったく異なるかたちで出題されることもあります。
それでも、「今までの問題」をしっかりと解いておくことは無意味ではありません。
出題傾向が変わらなければもちろんそれをそのまま生かすことができますし、たとえ出題傾向が変わったとしても赤本の学習でつけた力は、「変わってしまった出題傾向」を突破するために役立ちます。
また、過去の問題をしっかりと読み解き、「合格のライン」にまで自分の力を持っていくことができたのなら、それは自信にもなります。
「自信」はモチベーションにも直結しますから、良いことばかりです。
みんなはどれくらい解いている?
「赤本を何回くらい解くか」ということはしばしば問題になります。
しかしこれには明確な答えはありません。
「1回だけ解けばそれで暗記できてしまう」という人もいれば、「赤本を何回も繰り返して勉強していくことが何よりも大きな力になる」という人もいます。
ただ、一つの基準としては、やはり最低でも2回、そしてすべての問題がすんなりと解けるようになるまで3回、4回と繰り返して解いていく、というのが一般的なようです。
特に「間違ったところ」を重要視して、学習→赤本でのチェックを繰り返していく、という回答が多いと言えます。
また、「大学入試本番よりも短い時間で解いてみる」「ほかのやり方で解けるかどうかも確認する」「あえてほかの大学のものも行う」というようなやり方をとる人もいます。
解く順番はある?
ではここからは、「赤本を解くときには、古い順からやった方がよいか、それとも新しい順番からやった方がよいか」ということについて見ていきましょう。
これには諸説あり、どちらが正しいとは言えません。
「古い順番から解いていった方がよい」という意見については、
「最新版のものは、今回自分が受けるものととても近い。
そのため、早くに解き過ぎてしまってはもったいない。
古いものをやっているうちに、せっかく勉強した新しい問題について忘れてしまう」
というのがその意見です。
このため、「早い段階で解くのは、古いものの方がよい」としている意見もあります。
ただ、「新しいものからやっていった方がよい」という意見ももちろんあります。
その根拠となるのが、「古いものよりも、新しいものの方が現在の出題傾向に添っているから」というものです。
最新のものをやる方が、自分が受けるときに近い状態で受けることができるため、非常に高価が高いと考える向きもあるのです。
「古い順番に勉強をしていると、古いものを読解することに時間をかけてしまう。
新しいものを勉強する時間がおろそかになってしまうので、直近のものからやっていくべき。
データとしても、新しいものの方がより正確である」
という見方があるのです。
このうちのどちらを選ぶか、ということは、なかなか判断がつきません。
どの方法を信じるかは人それぞれでもあります。
「自分に残された時間はどれくらいか」ということも意識して選んでいくとよいでしょう。
なお、赤本の多くは、直近3~4年くらいのものがまとめられています。
これは、ベネッセのまとめたアンケートの「過去何年分の過去問を解いたか」の1位にほぼ等しい値です。
このアンケートでは、「過去3~4年分を解いた」という人が42.5パーセントで1位、「過去5~6年分」は21.5パーセント、「1~2年分」が15パーセントとなっています。
上で挙げた「古い順番に解いていく」という意見は、「過去4年分までではなく、もっと前までさかのぼって勉強する方法である」といった前提にたった意見であることも、頭に入れておいてください。
ある程度時間のある人のやり方だと言えるでしょう。
出典:ベネッセ「2014年10月実施 大学合格者アンケート」
http://kou.benesse.co.jp/news/benkyo/15081201.html
赤本はいつからとりかかるべき?
最後に、「赤本はいつからとりかかるべきか」ということについても見ていきましょう。
上でも取り上げたベネッセのアンケートによれば、「志望大学の過去の問題に取り掛かり始めたのは、12月から」というのが22.5パーセント1位でした。このように考えれば、取り掛かるのが遅かったとしても、きちんと勉強をしさえすれば一定の効果は得られると考えてよさそうです。
ただ、「8月までに始めた」「8月以前に始めた」と答える層も多く、この2つは合わせて37パーセント近くに上っています。
当たり前ですが、やり始める時期が早ければ早いほど、余裕をもって勉強に取り組むことができます。
そのため、余裕をもって勉強するにこしたことはないでしょう。
特に、「古い年から赤本を解いていく」というスタイルをとる人ならば、できるかぎり早めに取り組みたいものです。
「志望校をいつ決定するか」というのは、なかなか悩ましいものです。
ベネッセの出している統計ではなかなか面白いものが出ています。
それが、
「志望校を決定した時期で一番多いのは、高校3年生の7月から9月までの間。
それ以降で決める人も少なくない。
進路を決める時期は、高校3年生の7月から9月が1位、高校3年生の1月から3月が2位、3位が高校3年生の10月から12月。
しかし、難関大学に合格する率は、高校3年生の夏までに決めた人の方が圧倒的に高くなる」
という統計です。
「余裕をもって赤本に取り組み、勉強していく」ということを考えれば、やはり、高校3年生の夏までには進路を決めた方がよいでしょう。
また、この時期までにはしっかりと基礎固めをしておくことが望まれます。
出典:ベネッセ「高校生が志望大を決めた時期はいつぐらい?」
http://benesse.jp/juken/201703/20170301-1.html
まとめ
赤本について、さまざまな角度から見てきました。
かつてはたったの3点しかなかった赤本は今や500点を越え、「自分の望む大学の資料」が非常に手に入りやすくなっています。
この赤本は、受験生が受験を勝ち抜いていくうえで必携の書とも言えるもの。
最新版しか手に入らないのが残念ですが、学校の進路指導室などを巡り、過去のものを探し求めるのもよいでしょう。
過去3~4年分は解いておきたいものですが、「古い順からやるか、新しい順からやるか」は人によって違いがあります。
ただ、早めに取り組んでおくとよいでしょう。