奨学金で東大を目指す!東大生の受給状況や受けられる奨学金・返済の有無について解説
東大を目指す場合、幼少期から塾や予備校に通うイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。その場合、受験までに多額の費用がかかります。
東大にはさまざまな奨学金制度があり、実際に奨学金を活用しながら学ぶ学生も少なくありません。そこで本記事では、東大生の奨学金の実態や利用できる奨学金の種類・返済の有無などについて解説します。費用負担が気になり東大に進学するのをためらっている人は、ぜひ参考にしてください。
東大(東京大学)とは
東京大学(東大)は、日本を代表する国立大学であり、世界的に高い評価を受けています。創立以来、学術研究の最前線に立ち、優れた教員陣と充実した研究施設を備えています。学術的な厳しさと知識の深さを併せ持ち、高い学術水準を追求している点が特徴です。
また、広範囲な学問領域をカバーしており、学生は多様な専攻の中から自身の興味や能力に合わせた学びを選択できます。
さらに、国際的な環境を提供することで、留学生の受け入れや学術交流を通じてグローバルな視野を養うことも可能です。
このような環境で育った東大の卒業生は、リーダーシップや問題解決能力を持ち、社会で重要な役割を果たす人材として活躍しています。
東大に通うためにはお金がかかる
国立大学の入学金や授業料は、文部科学省が定める標準額をもとに、各大学が定めています。東京大学は、受験する学生の偏差値は高いものの、入学料や授業料はその他の国立大学とほとんど同じです。
【学部学生にかかる費用】
| 国立大学 | 東京大学(学部学生) | 差額 |
授業料 | 53万5,800円 | 53万5,800円 | 0円 |
入学料 | 28万2,000円 | 28万2,000円 | 0円 |
検定料 | 1万7,000円 | 第1段階の選抜:4,000円 | 0円 |
ただし、塾に通ったり、家庭教師をつけたりする場合は、個人によりかかる費用が大きく異なります。例えば、1年間にかかる塾の授業料だけを見ても、以下のように学年や授業のコマ数により変わります。
塾の授業料の例(四谷学院2024年度の場合)
- ・高校1・2年生(4月~翌3月):12万3,200円(週1コマ)~77万円(週10コマ)
- ・高校3年生(4月~12月):12万1,770円(週1コマ)~89万1,000円(週12コマ)
このほか、塾への入学料や諸経費、模試にかかる費用などもあります。東大を受験する際に、金銭的な負担を抱えている場合は、教育ローンや奨学金の活用も選択肢の一つです。
東大生とはいえ、一般の大学生であるため、条件があえば奨学金を利用できます。さらに、東大の場合、一定条件を満たした学生は、大学独自の奨学金制度が利用可能です。
東大および東大大学院には授業料の免除制度は存在する?
東大には特定の条件を満たすことで、授業料の全額または一部を免除する制度があります。ここでは代表して、学部学生が利用できる免除制度を紹介します。
授業料免除制度の対象となる学部学生は、以下の3つのいずれかに当てはまる人です。
- 1.経済的理由により授業料の納付が困難であり、かつ学業優秀と認められる人
- 2.申請者若しくは学資負担者が風水害等の災害を受け、授業料の納付が著しく困難であると認められる人
- 3.その他、やむを得ない事情があると認められる人
2および3については特段の事情がある人のみを対象としており、免除制度を利用する多くの人が1に当てはまります。1の条件を満たすためには、「経済的な理由で授業料の納付が困難」である点と「学業優秀である」点を証明しなければいけません。
経済的な理由については、東大が定める家計基準をもとに判断されます。世帯の総所得金額が218万円以下(給与収入のみの場合は400万円以下)の場合は、授業料の全額免除が許可されるケースもあるため、該当する人は積極的に狙っていきましょう。
また、学業優秀を証明するためには、普段の成績が東大の定める学力基準を満たしている必要があります。ただし新入生の場合は、入学試験に合格した段階で適格と見なされます。
条件の詳細や必要な提出書類は公式サイトをご確認ください。
奨学金を受けている東大生の割合は17.4%
奨学金を上手に活用することで、経済的な不安を大きく軽減することができます。
東京大学学生委員会が公表している「2021年度(第71回)学生生活実態調査」によると、学生のうち定期的に奨学金を受けている人の割合は17.4%でした。
「奨学金がどんな面で役立っているか」という質問で多かった上位3つの回答(複数回答)は、以下の通りです。
- ・家庭の経済的な負担が軽減される:77.1%
- ・多少なりともゆとりある生活ができる:36.0%
- ・奨学金があるので生活が成り立つ:28.3%
生計を支えている人の収入が低いほどその傾向が強くなります。
参考:東京大学 2021年度(第71回)学生生活実態調査結果報告書
奨学金にはさまざまな種類がある
ここでは、奨学金の大まかな種類を確認していきましょう。東大生の場合、留学や海外の大学院へ進学するために奨学金を利用する人も見られます。
◆借り方
- ・給付型:受け取った奨学金について返還の義務はなし
- ・貸与型(利息なし):受け取った奨学金はすべて返還が必要
- ・貸与型(利息あり):受け取った奨学金はすべて返還が必要で、返還時に一定の利息が加算される
◆申請時期
- ・予約採用:大学受験前、留学前、大学院進学前などに申請
- ・在学採用:在学中、留学中に申請
◆申請目的
- ・学士号、修士号、博士号取得
- ・海外の大学・大学院へ進学
- ・短期留学
- ・海外留学支援制度(大学院学位取得)
奨学金を受けるための成績条件
奨学金を申請する際には、進学の意欲や一定以上の成績が要件となります。以下は、各奨学金のうち成績に関わる申請要件の抜粋です。
- ・日本学生支援機構給付奨学金(予約採用型):高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること
- ・日本学生支援機構給付奨学金(在学採用型): GPA(平均成績)等が在学する学部等における上位2分の1の範囲に属すること、または修得した単位数が標準単位数以上であり、かつ、将来社会で自立し、活躍する目標を持って学修する意欲を有していることが学修計画書により確認できること
- ・東京大学学部学生奨学金:成績・人物とも優秀(調査書の学習成績概評がA以上)で、大学の進学において経済的支援が必要な者
東大生が利用できる奨学金制度とは?
ここでは、東大生が利用できる奨学金制度のうち、学位(学士号、修士号、博士号)取得に関する奨学金を抜粋してご紹介します。なお、実際に奨学金を利用する場合は、各奨学金を運営する団体や大学内にある本部奨学厚生課までお問い合わせください。
日本学生支援機構の奨学金
日本学生支援機構は、多くの学生が利用する奨学金です。給付型の場合は世帯収入などで支給額が変わります。また、貸与型の奨学金は利息の有無で第一種と第二種があり、貸与金額は各自で選択可能です。
◆給付型奨学金
- ・給付金額:住民税非課税世帯<第1区分>の場合
自宅通学者:月額2万9,200円
自宅外通学者:月額6万6,700円
授業料減免の上限額(年額):入学金 約28万円・授業料 約54万円 - ・給付期間:給付奨学生として採用されてから正規の卒業時期まで
◆第一種奨学金
- ・利息:なし
- ・貸与金額(月額)
自宅通学者:2万円・3万円・4万5,000円から選択
自宅外通学者:2万円・3万円・4万円・5万1,000円から選択 - ・貸与期間:4月から標準修業年限まで
◆第二種奨学金
- ・利息:上限年利3.0%
- ・貸与金額:月額2万~12万円(1万円刻み)から選択
- ・貸与期間:4~9月のうち本人の希望する月から標準修業年限まで
◆申請窓口
- ・予約採用の場合:在籍する学校を通じて申込み
- ・高等学校卒業程度認定試験合格者の場合:日本学生支援機構への直接申込み(申込資料の請求は日本学生支援機構の公式サイトから)
- ・在学採用の場合:学校に必要書類を提出したのち、インターネットで申込情報をJASSOに送信
東京大学独自の奨学金:東京大学学部学生奨学金
入学する前に申請を行い、東大合格を条件に受けられる予約型の奨学金です。奨学金は、給付されるため、返還の義務はありません。
- ・給付金額:年額50万円
- ・給付期間:入学後1年間
東京大学学部学生奨学金は、高校予約型の奨学金のため学校長経由で申請書類を郵送しなければなりません。個人では一切申請できないことから、希望する場合は事前に学校とも相談して各高校が定める締切日を確認しておく必要があります。
東京大学独自の奨学金:東京大学さつき会奨学生
東大には、東京大学基金というファンドがあります。東京大学さつき会奨学生とは、東京大学基金のプロジェクトである「さつき会奨学基金」を原資とし、東京大学への進学を志望する優れた女子学生です。東京大学さつき会奨学生は、女子生徒かつ自宅外から通学する成績優秀者であることが応募の要件となります。
東京大学学部学生奨学金と同様に、入学前に申請を行い合格した場合に給付され、返還の義務はありません。
- ・給付金額:月額5万円・入学支援金30万円
- ・給付期間:4年間(6年制の課程では6年間、修士進学の場合は修業年限まで)
東京大学独自の奨学金:東京大学さつき会奨学金(島村昭治郎記念口)
東京大学さつき会奨学生と同じく、女子学生向けの奨学金です。対象条件は、東大に在籍していて、自宅外から通学することなどとなっています。
- ・給付金額:月額5万円(年額60万円)
- ・給付期間
(学士課程に在籍中の場合)修業年限以内の期間、東大の修士課程(含:専門職学位課程)に進学する際は、進学した課程の標準修業年限の期間まで継続可能
(修士課程または専門職学位課程に在籍中の場合)当該課程の標準修業年限の期間
東京大学独自の奨学金:東京大学エンデバー・ユナイテッド・ホールディングス奨学金
「東京大学エンデバー・ユナイテッド・ホールディングス奨学金」(Tokyo University Endeavor United Holdings Scholarship)は、東京大学が提供する奨学金プログラムです。この奨学金は、経済的な困難を抱えながらも学業に優れた成績を収めている学生を支援することを目的としています。
- ・給付金額:月額9万円
- ・給付期間:2年間
東京大学独自の奨学金:東京大学女子学生奨学金
東京大学女子学生奨学金は、東京大学が女子学生の学業支援を目的として提供している奨学金制度です。
東大卒業生の江川雅子氏からの寄附を設立原資としています。
- ・給付金額:月額5万円
- ・給付期間:修士課程の標準修業年限
東京大学独自の奨学金:東京大学光イノベーション基金奨学金
東京大学光イノベーション基金奨学金は、東京大学が光科学・光技術分野における優れた研究やイノベーションを促進するために設立した奨学金制度です。
この奨学金は、光科学・光技術に関心を持つ学生に対して、学業支援と研究活動の推進を行うための経済的支援を提供します。受給者は一定期間、奨学金を受け取ることができます
- ・給付金額:月額15万円
- ・給付期間:4月~翌年3月までの1年間
東京大学独自の奨学金:東京大学基金ステューデントサポーターズクラブ奨学金
この奨学金は、東京大学の学生であることを前提とし、経済的な困難を抱えながらも学業に取り組み、優れた成績を収める学生を支援することを目的としています。
- ・給付金額:月額5万円
- ・給付期間:4月~翌年3月までの1年間(標準修業年限内に限る)
地方公共団体の奨学金
日本学生支援機構や東大独自の奨学金以外にも、地方公共団体が提供する奨学金があります。東大を目指す場合、卒業した後の学費返還負担の軽減などに活用可能です。ここでは、一例を紹介します。
◆東京都西東京市
- ・給付条件: 西東京市に住民票がある19~29歳のうち、日本学生支援機構から給付奨学生の認定を受けている人・または非課税世帯で課税者の扶養に入っていない人・あるいは受験生チャレンジを利用している浪人生
- ・給付金額:5万円
◆東京都東大和市
- ・貸与条件:大学への受験料の捻出が困難な一定所得以下の世帯を対象に、塾費用や受験料の貸付(無利子)、大学に入学した場合は返済免除
- ・貸与金額:学習塾等20万円・受験料上限8万円(高校3年生の場合)
◆埼玉県熊谷市
- ・貸与条件:申請時に熊谷市に住民登録があり、奨学金の貸与を受けて大学等を修了・かつ奨学金を返還している・就労しているなどの特定の条件を満たしていること
- ・貸与金額:期間中に返還した奨学金の利子額(上限3万円)
◆民間団体の奨学金
東大では、民間団体からもさまざまな奨学金を受けることができます。出願条件や金額などは多岐にわたり、一部には専攻する学問や将来の就業分野が指定されているものもあります。
また、他の奨学金と重複できるものもあるため、うまく活用すれば負担の軽減に役立つでしょう。例えば、以下のようなものがあります。
- ・学内選考で推薦者を決定し、大学から奨学会へ推薦する奨学金
- ・希望者が大学を介さず直接奨学会へ出願する奨学金
- ・その他の奨学金
東大の奨学金は返済不要?
一般的に、奨学金には返済義務がある場合とない場合があります。奨学金制度によって異なるため、個別の奨学金プログラムの規定に従う必要があります。
多くの奨学金は「返済不要」とされており、受給者は返済する必要はありません。これは、奨学金が教育や学業支援のために提供され、経済的に困難な学生をサポートするための制度であるからです。ただし、奨学金の種類によっては受給条件や期間が定められており、これらを満たさない場合は奨学金の支給が中断されることがあります。
また、一部の奨学金は「返済あり」とされており、受給者は一定の期間が経過した後に一部または全額を返済する必要があります。これは、奨学金を返済することで他の学生に支援を提供し、奨学金制度の継続を可能にするためです。
したがって、奨学金の返済義務の有無や条件については、具体的な奨学金制度の規定や契約書を確認する必要があります。
東大の奨学金に関するよくある質問
最後に、東大の奨学金に関連した以下のよくある質問に回答します。
- ・東大の奨学金は留学中も受けられる?
- ・東大の奨学金は大学院生でも受けられる?
- ・東大受験のために高校生や浪人生が受けられる奨学金はある?
同様の疑問を感じた人は、ぜひ解決の参考にしてください。
東大の奨学金は留学中も受けられる?
東大独自の奨学金の中には、海外留学する東大生を対象に支給されるものがあります。
例えば「東大友の会」が提供する「中長期留学のための奨学金」では、米国の大学に1学期以上・または2クオーター以上の留学を希望する東大生を対象に、最大年額50千ドルを給付しています。
学業成績に加えて留学の目的や熱意・実現性などをもとに給付の可否が審査されるため、決して簡単ではありません。しかし毎年数名~数十名の東大生が、この奨学金を利用して海外留学にチャレンジしています。
他にも、留学生が受けられる奨学金はいくつか存在します。時期や利用するプログラムによって利用可能な奨学金は異なるので、詳細は東大の公式サイトでチェックしてください。
東大の奨学金は大学院生でも受けられる?
東大独自の奨学金には、以下のように大学院生を対象とするものが存在します。
- ・東京大学光イノベーション基金奨学金
- ・東京大学女子学生奨学金
- ・東京大学エンデバー・ユナイテッド・ホールディングス奨学金
- ・東京大学基金スカラーペアレント奨学金
上記のほとんどが給付型の奨学金であり、返済の必要がありません。学費の支払いが困難な東大の大学院生にとって、心強い味方となるでしょう。
給付条件や金額などの詳細は、それぞれの公式サイトを確認してください。
東大受験のために高校生や浪人生が受けられる奨学金はある?
東大受験のために高校生や浪人生が受けられる奨学金として、「ゴールドマン・サックス大学受験給付型奨学金」を紹介します。
ゴールドマン・サックス大学受験給付型奨学金は、東大の受験生に限らず「経済的な理由で選択肢が限られてしまう高校生や浪人生」を対象に、受験や入学準備費用の負担軽減を目的として給付される奨学金です。
具体的には、大学進学を目指す高校3年生および1浪生のうち、独自に定める「所得等に関する条件」を満たした人が対象となります。給付金額は受験応援金として5万円・入学準備金として10万円です。
東大入学後の学費以前に、入学までの準備費用が工面できないと悩む人は、公式サイトで詳細をチェックしてみてください。
東大には奨学金の給付を受けながらでも通える
東大は難関大学ですが、入学料や授業料は一般の国立大学と同等です。そのため、一般的な私立大学と比較して必要な費用は最小限に抑えられます。それでも支払いが困難な場合や、学費の負担を軽減したい場合は、国や自治体・民間・大学独自で実施している奨学金の活用を検討してみましょう。