慶応義塾大学医学部の入試科目とその難易度
世の中には「難関大学」「名門大学」と呼ばれるものがあります。
慶応義塾大学、特に慶応義塾大学医学部は、だれもが「難関大学(学部)だ」「名門大学(学部)だ」と認めるところでしょう。
1858年、現在の1万円札に印刷されている福沢諭吉がひらいた蘭学塾を祖とするものであり、その5年後には、当時では珍しい「英語」を扱う塾へと変わっていきました。
それからさらに5年ののち、私たちがよく知る「慶応義塾」の名前を掲げることになります。
実に150年以上の歴史を持つ慶応義塾大学は、現在では六大学のうちの一つと称されており、早稲田大学と並んで、私立大学の雄として知られています。
私立大医学部の最難関といわれる慶応義塾大学医学部
慶応義塾大学医学部は1917年、細菌学者の北里柴三郎を学部長に迎えて慶応義塾大学医学科として発足しました。
その長い歴史とたしかな理念のもとに創設された慶応義塾大学内の医学部は、今も昔も、私立大学医学部の最難関として知られています。
その偏差値は72.5とされており、東京大学の理科一類・二類をも凌駕する偏差値の高さを叩きだしています。
しかし、慶応義塾大学の場合、それ以外にも、「総合政策学部」「環境情報学部」が医学部と同じように72.5という偏差値をマークしています。
(年によって多少偏差値は異なります。73.2というデータもあります)
いずれにせよ、非常に狭き門だといえるでしょう。
ここを突破するためには、日本でもトップレベルの深い知識と、試験をクリアするためのノウハウが求められます。
さて、この慶応義塾大学医学部ですが、まずは慶応義塾大学医学部の学費や奨学金制度について取り上げます。
学費について
慶応義塾大学医学部の学費は、私立大であることもあり、非常に高いものです。
医学部での6年で、総額は2000万円を越えます。
1年で約370万円の学費がかかってきますが、他の私大医学部でも同等、もしくはそれ以上の金額になることもあります。
よって、慶応義塾大学の医学部だけが特別学費が高いというわけではありません。
奨学金制度について
慶応義塾大学の医学部は、「お金がない人は入ってはいけない」というようなところではありません。
奨学金制度がしっかりと整っており、「学問のすゝめ奨学金」などの慶応義塾大学ならではの様々な制度があります。
中でも、「慶応義塾大学医学部人材育成特別事業奨学金(合格時保証型)」は、他の学部には見られない医学部だけの奨学金制度です。
一般入試の成績がよかった人間に対して、1年生~4年生まで継続的に奨学金が支払われる制度です。
「創始者の理念に従い、優れた人材を手厚くサポートしていこう」という考えのもと、2015年に作られました。
上位者のなかでも10名程度にしか支払われないため非常に狭き門ではありますが、この奨学金は「給付」というかたちをとっています。
つまり、返済の義務がありません。
また「成績上位者であり、かつ入学後の成績が不振ではない」という条件のみで受けることができるのが最大の特徴でもあります。
このため、家庭の年収などの制限はありません。
年間で200万円の奨学金を受け取ることができるため、学費の半分以上をこれでまかなうことができます。
なお、5・6年次には、100万円がそれぞれ支払われます。
合格発表のときに対象者かどうかがわかるため、「いくつかの大学に合格したが、どこに行こうか迷っている」といった場合の判断基準のひとつにしてもよいでしょう。
上記以外にも、民間の奨学金を利用する方法があります。
3つの受験方法
ここからは「受験方法」について紹介します。
受験方法は3種類あります。
「一般入試」「帰国生入試」「留学生入試」です。
「一般入試」は、最もイメージがしやすいでしょう。
多くの人がこれで受けるかたちになります。
医学部の場合、募集人員は70名程度です。
試験は3科目の筆記試験を行う第1次試験と、小論文と面接を行う第2次試験があります。
「帰国生入試」は、海外から帰ってきた人を対象とするものです。
日本国籍もしくは永住者の資格、あるいは特別永住者として認められる人が対象であり、2017/2018年度の場合は2016年9月1日以降に高校を卒業した者(もしくは卒業見込みの者)でなければなりませんでした。
「帰国生入試」を受ける場合は、それぞれの国の教育制度に応じた証明書を提出しなければなりません。
なお、アメリカの場合(SAT)は特に、「3科目中に、数学および自然科学系の科目が含まれていること」が求められます。
また、Webエントリーと郵送出願の両方を行うという点にも注意が必要です。
さらに、帰国生入試受験者は留学生入試を受けることはできません。
慶応義塾大学医学部では、留学生も積極的に受け入れています。
「留学生入試」の出願資格は、下記の3点です。
① 学校教育を12年間修めたもの、及び修める予定の者
② 日本以外の国において、当該国の教育制度に基づく中学校及び高等学校の過程を修了、または修了見込みの者
③ ②の該当国における大学入試資格を有する者、及び有する見込みの者
提出書類は日本語もしくは英語で作成しなければならず、さらに翻訳内容が原本の内容と相違ないことを出身高校や大使館等の公的機関で証明を受けることが必要です。
一般入試について
先述した3種類の入試方法のうち、多くの人が気になっているのは、やはり「一般入試」でしょう。
慶応義塾大学医学部の場合、一般入試は第1次試験 と第2次試験の2段階があります。
第2次試験まで設けているのは、医学部と看護医療学部のみです。
医学部の場合、他学部に比べて結果が出るのが非常に遅いのが特徴です。
他学部はすべて2月までに合格発表が行われますが、医学部の場合は第二次試験の試験日も合格発表日も3月にかかります。
2018年度の入試の場合、第1次試験が2月19日に実施され、2月26日に第1次試験の合格発表が行われました。
そして、第2次試験は3月1日に行われ、3月5日に合否の発表がされました。
一般入試第1次試験
慶応義塾大学医学部の第1次試験は、3教科4科目からなります。
「外国語(英語のみ)」「数学(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、A、B)」、「理科(物理・化学・生物)」です。
外国語は、医学部の場合は英語しか認められません。
また、慶応義塾大学医学部だけに限ったことではないですが、「理科」の分野からは2科目を選択します。
さて、ここからはより細かくそれぞれの特徴について見ていきましょう。
英語の出題傾向・対策
多角的な物の見方を重要視します。
偏差値の高さからイメージできるかもしれませんが、「単語だけを覚えている」「一般的な教科書だけ履修している」というだけでは、まず突破は難しいといえるでしょう。
慶応義塾大学医学部の場合、英語と日本語をそれぞれ母国語並みに使えることが望まれます。
かなり専門的な科学についての文献を、英語で読み解くことが求めらることでしょう。
難しいボキャブラリーや慣用句も多々、見受けられます。
教科こそ「英語」ですが、実際には単純な「英語だけの知識」を求められるのではなく、高い総合力が求められます。
また、英作文の能力を問われるような設問も出題されるので英語を日本語に訳すことはもとより、日本語を英語に訳する能力も必要です。
数学の出題傾向・対策
慶応義塾大学医学部では、漸化式や微分・積分が好まれます。
また、二次曲線などの問題もよく出されています。
ただし、漸化式だけを学んでおけばよいというものではありません。
慶応義塾大学医学部自体の偏差値の高さからも分かるように、国公立の最難関の理系レベルの問題が頻出します。
難易度が高いことは前提として、計算も膨大な量が出されます。
このため、難しい問題をクリアできる能力は当然として、スピーディーに正しい解答を導く能力も求められます。
理科の出題傾向・対策
上記でも述べましたが、理科は「物理」「化学」「生物」の3つのなかから2つ選んで受験することになります。
他の科目にも言えることですが、慶応義塾大学医学部の受験においては、教科書だけの学習では追いつかないことがほとんどです。
教科書に載っている問題をクリアすることはもとより、そこに載っていないプラスアルファの問題が出されることもよくあります。
また、答えを求めるだけでなく、「過程」を問う問題も多く、応用力が試されます。
非常に難易度が高いため、十分準備して臨まなければなりません。
物理においては、力学や熱力学などがよく出てきます。
さらに、他の大学ではあまり出されない分野(原子)などが問題として選ばれることもあります。
周りも非常にレベルが高いため、苦手分野があると非常に不利になります。
どの分野もしっかり勉強しておきましょう。
生物では、生殖や遺伝に関する問題がよく出されています。
他大学ではよく見られる問題が出されにくい傾向にあるなど、かなりオリジナリティに富んだ問題が出題されることも特徴です。
「教科書や参考書を読みこむ立場」だけでなく、「考察せよ」といった問題傾向が強く見られ、積極的に学問に向き合ってきたかどうかも問われるでしょう。
一般的な高校生では難しすぎるレベルの問題が出されることも多いので(もっとも慶応義塾大学医学部の試験の場合、他のすべての科目でもほとんど同じことがいえます)、学力レベルそのものはもとより、生物自体に対する高い知識と強い関心が問われます。
化学においても、非常に高い知識レベルが求められます。
慶應義塾大学医学部の問題で特徴的なのは、受験の段階においてすでに、大学レベルはもとより最新の化学の研究を把握していることが求められるという点です。
高校の問題集のなかで「難しい」とされる問に答えられることは大前提として、常に最新の情報にアンテナを張る鋭さが求められます。
計算問題はそれほど複雑ではなく、理論が分かればきれいに回答を出すことができると言われています。
その反面、記述問題はかなり難しいとされています。
先にも述べたように、「そもそも知っていなければ答えられない問題」が出題され、そうでなければ「基礎知識をさらに応用しなければ解けない問題」が出てきます。
一般入試二次試験について
慶応義塾大学医学部の受験は、2段階あります。
ここからは二次試験について見ていきましょう。
二次試験は、「面接試験」と「小論文」からなります。
面接試験では個人面接が行われ、小論文ではテーマが出題され、それに対しての回答を記すことが求められます。
面接対策
一般的なことも問われますが、「併願した学校はどこか」「日本の医療がはらむ問題点とその解決策を答えよ」「なぜ医学部を志望したのか」などを問われます。
質問自体は他の大学でも聞かれるものですが、それゆえにライバルとなる他の受験生との差が出やすいともいえるでしょう。
もちろん事前に対策を講じておくことは必要ですが、棒読みで話すと好感触は得られません。
また、予想もしていなかったことを聞かれた場合でもしっかり落ち着いて答えられるようにしておくことが必要です。
「設問の答えを用意して、それを答える」というよりも、「人前でしゃべること」「面接の回数を重ねること」を意識して練習していった方がよいでしょう。
自分の受ける分野や希望する分野についてはしっかり新聞などを読み込んでおき、時事ネタを振られたときでも答えられるようにしておきます。
小論文対策
小論文では、「(一見すると魚に分類されそうな)イルカが哺乳類であることを、子どもに説明せよ」「死刑制度について」などが問われます。
設問自体はそれほど難しくはありませんが、文字数が400文字未満と少ないうえに、時間も50分とかなり短く設定されています。
文章の基本構成を構築する能力が足りていないと、かなり苦戦することになるでしょう。
そのため、普段からしっかりと小論文を書く練習をしておく必要があります。
またその際は、「伝えたいことを書く能力」だけでなく、「簡潔にまとめる能力」も意識してつけていきましょう。
文章は、長くするより短くする方がより難しいからです。
ここまで、慶応技術大学医学部の学費や奨学金制度、受験の流れ、そして試験問題とその対策について見てきました。
名実ともに、日本のなかで最も高いレベルにある医学部の一つです。
ライバルも当然強力ですから、しっかりと勉強して臨みましょう。